米国やドイツなど欧米では、神様ではなく王様と言うらしい。お客さま、のことである。王様でも十分偉いが神様との違いは、人間であること。ここに雲泥の差がある。人が仮に悪事を働けば、法で対処できるからだ。
そう指摘するのは犯罪心理学者の桐生正幸東洋大教授(米沢市出身・S55卒)。顧客が従業員に迷惑行為をする「カスタマーハラスメント」を分析して、著書にまとめた。その中の加害経験に関する調査に驚かされた。国内約2千人に尋ねたところ、半数近くが「ある」と回答した。
態様別では「淡々と静かに話す」カスハラが最多だった。例えば、相手を問い詰めるようなケースか。思い当たる節はないか、我が振る舞いを顧みた。加害に及ぶ傾向があるのは、高い自尊心を持つ人という。人間の大切な感情だが、過ぎれば尊大になり、他者を追い込む。
一方の被害者側は深刻である。心を病み、休職や退職を強いられる従業員もいる。国は法改正を進め、企業にカスハラ対策を義務付ける考えだ。ただでさえ人材不足の昨今、働く人を守る環境の整備は一層求められるだろう。顧客とともに従業員も尊重されるべきである。
2024年6月14日山形新聞より
「カスハラの犯罪心理学」あの客は、なぜキレるのか?
「カスタマーハラスメント(カスハラ)」とは、従業員への悪質なクレームや物理的・精神的な嫌がらせ全般を指す。
“店員にキレる客”を誰しも見たことがあるように、カスハラは日本で大量発生している。さらに、コロナ禍によって拍車がかかり、被害は拡大している。
2022年2月には、厚生労働省から「カスタマーハラスメント対策企業マニュアル」が発表された。現代日本において、カスハラは大きな社会問題と化しているのだ。本書では、犯罪心理学者として長年カスハラにかかわってきた元「科捜研の男」桐生正幸が、豊富な調査実績を基にカスハラを生む心理と社会構造を暴き出す。
接客応対者向けのカスハラ対策マニュアルも掲載。どちらのリンクからでも購入できます。
桐生 正幸(きりう・まさゆき)
山形県生まれ。東洋大学社会学部長、社会心理学科教授。日本犯罪心理学会常任理事。日本心理学会代議員。日本カスタマーハラスメント対応協会理事。文教大学人間科学部人間科学科心理学専修。博士(学術)。
集英社インターナショナルより
山形県警察の科学捜査研究所(科捜研)で犯罪者プロファイリングに携わる。その後、関西国際大学教授、同大防犯・防災研究所長を経て、現職。
著書に『悪いヤツらは何を考えているのか ゼロからわかる犯罪心理学入門』(SBビジュアル新書)など。