山形新聞社など東北の5新聞社が主催する第68回東北六県囲碁大会は最終日の30日、山形市の山形メディアタワーで3~5回戦が行われ、本県代表チームは団体戦で準優勝した。個人戦では大将の太田尚吾六段(36・H18卒)=山形市=が3度目の優勝を果たした。副将の山崎光基六段(17)=同、先鋒の斎藤欣也六段(56)=酒田市=はともに3位だった。団体優勝は岩手県。
初日に連勝発信した本県は、3回戦でも福島県にストレート勝ちし、勢いを維持した。太田六段は得意な形で優勢を築き、山崎六段は貯金を生かしてそれぞれ逃げ切った。斎藤六段は相手の悪手にうまく対応し、リードを広げた。
青森県との4回戦は2-1で勝利した。太田六段は複雑な局面から相手陣営に仕掛けて取り返し、勝機をたぐり寄せた。山崎六段は一進一退の攻防の末、ヨセで抜け出されて惜敗。斎藤六段は手本のような立ち回りで盤石な形勢とした。
全勝同士で迎えた最終5回戦は、大会2連覇中の岩手県と対戦し、1-2で競り負けた。太田六段は意表を突く相手の作戦に惑わされず、大差で個人戦全勝を達成した。山崎六段はチャンスが巡ってこず、斎藤六段は序盤に見落としがあり、それぞれ敗れた。
監督の山崎恵大六段(20)=山形市=は「団体優勝にあと一歩及ばなかったが、全員が勝ち越し、雰囲気も良かった」と選手をねぎらった。
閉会式では、主催者を代表して本部長の峯田益宏山形新聞取締役編集局長が入賞したチームと個人に賞状や盾などを手渡した。審判長を務めた日本棋院の安藤和繁五段は「思っていた以上の碁の内容が素晴らしく、どのチームが勝ってもおかしくない戦いだった」と講評した。
最終日の対局は次の通り。(先が先番、〇が勝者)
- 3回戦
- 山形 3-0 福島
- 〇太田六段 9目半 先木村六段
- 先山崎六段 11目半 鈴木六段
- 〇斎藤六段 中押し 先宮腰六段
- 秋田 3-0 宮城
- 岩手 2-1 青森
- 4回戦
- 山形 2-1 青森
- 〇先太田六段 中押し 野口六段
- 山崎六段 1目半 先鳴脇六段〇
- 〇先斎藤六段 9目半 大橋六段
- 秋田 3-0 福島
- 岩手 2-1 宮城
- 5回戦
- 岩手 2-1 山形
- 先松村六段 18目半 太田六段〇
- 〇熊谷六段 中押し 先山崎六段
- 〇先鳴海六段 中押し 斎藤六段
- 青森 2-1 秋田
- 福島 2-1 宮城
- 総合成績
- 団体戦(勝ち数が同じ場合は個人戦の勝ち数による)
- 1.岩手5勝0敗 2.山形4勝1敗 3.秋田2勝3敗 4.青森2勝3敗 5.福島2勝3敗 6.宮城0勝5敗
- 個人戦:大将(勝ち数が同じ場合は当該選手の対戦成績による)
- 1.太田尚吾六段(山形)5勝0敗 2.高橋新一郎七段(秋田)3勝2敗 3.五十嵐成也六段(宮城)3勝2敗 4.松村光六段(岩手)2勝3敗 5.野口真弘六段(青森)2勝3敗 6.木村徳行六段(福島)0勝5敗(後略)
晴れやか「やり切った」
団体戦で初優勝した第65大会から3年。最終5回戦までもつれた戦いで敗れた本県代表チームの表情は晴れやかだった。3年前を上回る最多11の白星を挙げての準優勝に「次につながる負けだった。やり切った」。チーム一丸となって互いに刺激し、高め合った成果が表れた。
審判長の安藤和繁五段は「粒がそろい、総合力が高かった』と評し、その中心に個人戦で優勝した、大将・太田尚吾六段の存在を挙げる。太田六段は2012年に若手囲碁愛好者でつくる「那智囲碁研究会」を結成。県内の若手棋士が集まり、月に一度の例会を通して腕を磨いてきた。
従来は自身の対局や先人が残した棋譜などから研究を深めるのが一般的だったが、人間を超える強さを持つ人工知能(AI)も活用。AIが繰り出す理由の分からない手には。着手を見直す「検討」を徹底的に行い、血肉に変えた。太田六段は「地元開催が追い風になった」と謙遜しつつも「県囲碁界の底上げにつながったなら本望』と誇りを見せた。
2024年7月1日山形新聞より