自社で構築したアプリを操作し、設計基準をクリアしているかを確認する社員=米沢市

建設業の後藤組(米沢市、後藤茂之社長・S62卒)が、デジタルトランスフォーメーション(DX)の優れた取り組みを顕彰する日本DX大賞2024の主要部門で大賞を受賞した。DXが進みづらいとされる建設業で、全社員がアプリ制作に挑み、業務の課題解決を図る取り組みが、他の企業の参考になると評価された。

建設業務、課題解決への対応評価

同大賞は先進事例の共有を目的に、日本デジタルトランスフォーメーション推進協会などでつくる実行委員会が主催し、国の省庁が後援する。全国から132件の応募があり、6月に決勝大会が東京都内で開かれた。組織の意思決定や業務プロセスの改善などに取り組んだ事例が対象の「マネジメントトランスフォーメーション(MX)部門で、大賞に輝いた。特別賞「サイボウズ賞」も受賞した。

同社は業務アプリ構築クラウドサービスを使い、84人の全社員がアプリ作成に取り組む。社員が作ったアプリは2千。このうち約960が実際に活用されている。従来は経験が必要とされていた工事工程表を、過去の工事現場で蓄積したデータを基に自動で作成できるようにしたり、日々入力する営業に関する数値を、グラフ化など即座に会議資料に変換できるようにしたりした。取り組み前と比べ、書類は6割以上、残業時間は2割減ったという。

DX導入は建設業の人手不足に対応するため、若手社員の早期育成に迫られたことがきっかけ。蓄積したデータを業務に生かすことで、設計基準のチェックなど、経験が少ない若手でも一人で完結できる領域が増えているという。

米沢市内の建設現場で、タブレットを手に品質・安全管理をしていた入社3年目の佐藤羽那さん(24)は「図面などもその場で共有、確認できるのがよい。現場の課題を踏まえ、アプリを改善しながら使っている」と話す。

同社は今後、自社が作成したアプリの販売を始める方針。後藤社長は「同業他社などに紹介することで、地方の建設業界全体のDX化に貢献したい」としている。

2024年7月9日山形新聞より