里親基金の運営方針について話し合う関係者=米沢市

既存制度の穴に活用想定

生活困窮や虐待などの事情を抱えた子どもや若者を金銭面で支援しようと、米沢市のNPO法人が中心となり、完全給付型の基金を創設した。保護者の収入が途絶えた高校生に対し、修学旅行の費用を補助することがすでに決定。子どもたちを資金面から支える「里親」を募り、既存の制度ではすくいきれない事例などでの活用を想定する。

基金名は「子どもの未来を支える里親基金」。同市でひきこもり支援などに取り組むNPO法人「With優」が主導し立ち上げた。先月21日開いたキックオフ会議には、法律や社会福祉などの専門家らが参加し、具体的な事例などについて支給の可否を検討した。保護者が体調を崩して働けなくなり、修学旅行の費用を捻出できず、参加を諦めかけた置賜地方の高校生に3万円を補助するなど2件の支給を決めた。

基金創設のきっかけは今冬、置賜で起きたある事例。家族から虐待を受けたという高校3年の生徒が家を飛び出したものの、18歳に達し、原則的に児童相談所の保護などを受けられない年齢だった。生徒は同法人が運営する自立支援施設「第2の家」を頼った。

同法人代表の白石祥和さん(43・H12卒)が、交流サイト(SNS)上で、生徒が就職し、自活できるようになるまでの資金を援助する「里親」を募ったところ、1日で35万円が寄せられた。「実際の里親になって子どもを養育する体力はないけれど、経済的な支援はできる」という住民の声も白石さんの背中を押した。

現在支援を募っており、個人は毎月1口千円から、法人・団体は1口3千円から受け付ける。支給対象は、原則県内在住の25歳未満の人。親を亡くし、自立までに資金援助が必要な若者、生活困窮世帯で、宿泊や遠出などの経験ができない子どもらへの支援を想定している。各地のNPO法人などと連携しニーズを把握し、支援につなげる。

白石さんは「制度のはざまにいる若者や子どもの経済的支援とともに、彼らを見守り続けることができる態勢をつくりたい」と話す。問い合わせはWith優内の事務局0238(33)9137。

2024年11月4日山形新聞より