知名度向上に正念場 人材確保など一定成果
米沢市内のものづくり企業が生産現場を公開する地域一体型の「360°よねざわオープンファクトリー」は関係者が「正念場」とする3年目を迎える。来場者や参加企業が着実に増え、一部では企業の人材確保にもつながるなど一定の成果を残している。ただ、先進地の著名なオープンファクトリーに比べ、米沢版の存在が広く知られているとは言いがたく、さらなる成長を目指す。
360°よねざわファクトリーで米沢織の企業を見学する人たち=2024年9月、米沢市 「360°」は9月中旬の3日間開催。普段見られない生産現場を公開し、従業員らが来場者に、自社のものづくりについて説明する。長い歴史と高い技術を誇る同市のものづくり力を観光誘客をビジネスチャンスの創出につなげようと、2023年に始まった。23年に米沢織関連をはじめ12社、24年は木工関連が加わり22社が現場を公開した。県内や隣県中心に関西圏からも訪れ、来場者は23年が約2400人、24年約1.6倍約3800人となった。2割ほどがリピーターという。
市内には大手メーカーの受託製造をする企業が多く、高い技術に比して、地元の企業名や「米沢」に光が当たることが少なかった。360°は自社の技術を一般消費者に加わってもらう機会となり、従業員にいい刺激を与えている。一部の企業では、360°で見学に訪れた若者が就職したケースもあり、人材確保につながり始めている。
実行委員長の近藤哲夫近賢織物社長(S55卒)は「他の業種にも広げたり、地域の飲食・宿泊事業者とも連携し、交通手段を含めてツアー化を図ったりするなど、受け入れ態勢を構築していきたい」と展望する。
国内には数万人を集める有名オープンファクトリーがいくつか存在する。その中で360°が、どのように特徴を打ち出していくのか。
事務局を務める観光まちづくり会社プラットヨネザワの宮嶋浩聡社長(H15卒)は「3年目からが勝負」とする。4~10月の大阪・関西万博に合わせ、訪日客の取り込みも図ろうと、フランス・パリのギャラリーで、ファッション関係者が多く訪れる1月「ファッションウィーク」中に、360°を売り込んだ。宮嶋社長は「まずは東日本全域から集客できる仕掛けをし、東北のオープンファクトリーのトップランナーとして地位を確立したい」と意気込む。
記者自身、1年目に360°を取材した際、初めてその高い技術を知った企業がいくつかあった。オープンファクトリーは企業関係者だけでなく、住民が地域に誇りを持つ好機となる。知名度を上げるためにも、肝となるのは地域一体型の深化だろう。勝負の年に注目だ。
2025年3月20日山形新聞より