陸上自衛隊中部方面総監:遠藤充(まこと)さん(56・S62卒)

人間性の半分は古里米沢で、もう半分は卒業した防衛大学校で育まれたと考えている。母校米沢興譲館高の建学の精神である謙譲の心と、防衛大の学生綱領の筆頭・廉恥。双方に不思議と共通した謙虚さ、慎みを大切にしてきた。「力を持つことが許されるがゆえに必要な心構え」と語る。

防衛大は、国際関係論を無償で勉強できる大学として選んだ。しかし4年間の寄宿舎生活で国を思い、国民を守る使命に燃える同級生たちの志に触れ、自分の心にも同じ灯がともった。1991年の第44普通科連隊(福島県)配属を皮切りに、2004年には35歳で第17ゴラン高原派遣輸送隊長として国連平和維持活動(PKO)に参加。イスラエルとシリア国境の危険地域で国連兵力引き離し監視軍(UNDOF)の食糧・物資輸送などを担い、任務を達成し、隊員43人を無事帰国させるため、7か月間指揮を執った。

第14旅団長(香川県)、第7師団長(北海道)を歴任し、23日まで防衛大副校長。新たに総監を務める中部方面は、東海、近畿、北陸、中国、四国の2府19県と管轄範囲が広い。重要な工業地帯を抱え、甚大な被害が想定される南海トラフ巨大地震にも備えなければならない。「どうすれば組織が強くなるか、隊員が幸せかを基準に判断してきた。現場を強くできる環境整備をもって任務を果たしたい」

趣味は幼少期から親しむスキーと読書。赴任地を離れられない仕事柄、昨年病気で亡くした妻に寄り添えなかった申し訳なさが残るが、娘2人は看護師として父と同じく社会に貢献している。自宅は都内。

2025年3月25日山形新聞より