リアルの中に無機質さ
「顔を替える人」1971、ラワン、クスノキ
男:高さ175センチ、幅53センチ、奥行き54センチ/女:高さ86センチ、花63.5センチ、奥行き159センチ鈴木実さん(1930~2002年、高畠町出身・S23卒)
鈴木実は果樹農家に生まれ、文学や芸術に詳しかった父親の影響を受けて育ちました。県立米沢興譲館中学校(現、米沢興譲館高)を卒業後は、米沢に疎開していた彫刻家桜井祐一に師事します。東京に戻った桜井を追って上京、国画会などで活躍しました。
鈴木は人間関係の内にある悲しみや空虚に目を向けました。幼少期に病気がちであったことも、死生観に影響したようです。1960年代後半から作風は具象に戻り、身近な人をモデルにした作品が増えました。
本作は外科医の男性と、寝台に横になる患者の女性でできています。2体は等身大で、一本の木から掘り出した重量感があります。使われたラワンは木目が目立たない素材で、木彫に用いるのは珍しいです。手は本物そっくりに生々しく表現し、患者にかけた布部分は機械で表面を磨いてラワンの無個性な素材感を際立たせています。リアルさの中に無機質な雰囲気をまとい、見る人に不思議な印象を与えます。
(山形美術館協力)
この作品は常設展「彫刻の小部屋」で鑑賞できます。毎週土曜と、日曜日午前中は中学生以下の入館が無料です。
2025年4月7日山形新聞より