つや姫ハワイ販売10年・県民交流訪問団・日本酒、観光の魅力発信
県産ブランド米つや姫のハワイ輸出10年に合わせ、米ハワイ州を訪れた県民ハワイ交流訪問団(団長=寒河江浩二山形新聞会長・主筆)は、つや姫を中心としつつ、本県の日本酒や観光の魅力も発信した。プロモーションを通じ、ハワイの住民が旅に求める要素として「食」への関心が高いことが分かり、県産品の販路の拡大との相乗効果に期待が高まった。
「ハワイの人は食べることが大好き。おいしいものを食べ、その背景についても知りたい」。現地の旅行会社からはこんな声が上がった。吉村美栄子知事や県観光物産協会などの関係者は、日本に観光客を送り出す計6社のトップらに本県の観光資源を紹介した。ハワイでは繰り返し日本を訪れる人が多く、ゴールデンルート(東京、京都など)以外のニーズが高まっている。その中で県産のコメ、日本酒の評価は総じて高く、各社からは味わうだけでなく、農産物の収穫や調理など食にまつわる体験をしたいとの要望を受けた。
山口敦史同協会副会長も、本県食文化への期待の高さを感じた。「ハワイでつや姫を知り『本場で食べたい』と来県したり、逆に旅行中に本県で食べた人が、ハワイに戻ってつや姫を買うということがあり得る。県産品の販売と観光誘客に相乗効果が生まれる」とし、連携して戦略をつくる重要性を再認識した。
一方の県産日本酒。2023酒造年度(23年7月~24年6月)の総輸出量で、米国は4割近くを占める最大の輸出先だ。ハワイは米国本土進出への足掛かりとなる土地であるとともに、世界中から裕福な旅行者が集まる重要な市場。だが県酒造組合の小関敏彦特別顧問(S49卒)はハワイでは観光客の姿がコロナ禍前より減っているとし、「不景気になりつつある」と感じた。さらにトランプ米政権の関税政策について「まだハワイの売り場に影響はないが本格化すると危ない」と警戒する。本県酒造業界は関税政策のため、欧州や東南アジアへの販売促進にも力を入れ始めているという。
食について学ぶ短大の学生に、県産日本酒について解説する県酒造組合の小関敏彦特別顧問(S49卒)=米ハワイ州 米国への輸出には不透明感もも漂うが中長期的な視野での収穫もあった。小関特別顧問が「効果的だった」としたのが、ホノルル市にある短期大・カピオラニコミュニティカレッジの調理学科の学生に対する講義。ユーモアを交えつつ県産日本酒の特長を伝えると、学生は笑顔を見せながら聞き入った。小関特別顧問は、全国的に有名な酒蔵がニューヨークの調理師専門学校で同様の試みをしているとし、「将来飲食業に関わる人たちに、山形の日本酒について伝えられたのはとても良かった」と話した。
訪問団はつや姫を核に、本県とハワイの関係性が着実に強まっている状況を実感した。政策の変化などにより状況が不透明となっても、地道に交流を継続し、その効果をより多くの分野に広げる取り組みが、今後一層求められている。
2025年6月2日山形新聞より