米沢市の白布温泉で唯一かやぶき屋根の残る西屋旅館(遠藤友紀雄社長・S58卒)で、屋根の修繕作業が行われている。福島県の職人が作業を担い、傷んだ部分を補修している。費用の一部をクラウドファンディング(CF)で賄い、CF返礼品として県内外の支援者7人が4日、屋根の上で作業の一部を体験した。

かやぶき職人・小椋竹彦さんの指導の下、かやぶきの修繕作業を体験する支援者=米沢市・西屋旅館

2012年の前回のふき替えから13年がたち、夏の日差しと冬の風雪に耐えてきたかや(ススキ)は痩せ、砂ぼこりが混じった状態だった。参加者は福島県南会津町のかやぶき職人小椋竹彦さん(53)の指導を受け、補修作業「差しがや」に当たった。

黒ずんだススキを取り除き、できた隙間に長さ約1メートルにカットした新しいススキを差し入れた。抜けずに苦労したが、へら状の道具でたたいてならすと、補修前後の色の違いがくっきり。福島市の会社員丹治宏大さん(52)は「体験できて光栄。何度か宿泊し、美しい景観を残してほしいと思い、微力ながら支援した。きれいな屋根を見に、また泊まりたい」と話した。

修全は費用が課題だったが、昨年5月にCFで支援者を募集すると、最終的に計315人から750万円以上が寄せられた。返礼品に用意した修繕体験には、18人の申し込みがあった。

かやぶき屋根があるのは1829(文政12)年建築の母屋。他の2旅館とともに白布温泉のシンボルだったが、2旅館は2000年に火災で焼失。その後は西屋だけが昔ながらの風情ある姿を残す。地元で原料と職人を調達できず。小椋さんを頼った。補修に会津地方のススキ約500束(1束5~6キロ)を使用。作業は6月23日に始め、今月中旬まで続く。体験は5日もある。

建物は11年に市の景観重要建造物第1号に指定され、国の有形文化財登録を目指す。遠藤社長は「多くの方から支援をいただき、非常にありがたい。この景観をなんとか後世に残したい」と話した。

2025年7月5日山形新聞より