「ゆうぷらなんよう」を開設したWith優の白石祥和代表(H12卒)。氷河期世代への支援制度の必要性を痛感している=南陽市

石破茂首相が重要課題とした年金制度改革法が6月、成立した。パートなどの短時間労働者が厚生年金に入る年収要件(106万円以上)を撤廃し、基礎年金(国民年金)の将来的な底上げを付則に明記。底上げは就職氷河期世代などが低年金に陥るのを防ぐ狙いがあるが、果たして支援策は十分なのか。収束難にあえいだ世代は非正規雇用などの就職環境に置かれ、生活が厳しい世帯もある。

山形労働局によると、就職氷河期世代は1993年ごろから2004年ごろまでに高校や大学を卒業した人らで、県内に約20万人いるとされる。40~50代は正規雇用のため低収入で困窮生活を強いられた人もいる。県内有効求人倍率は0.51倍まで落ち込み、厳しい雇用環境が続いた。

「社会に出る時に少しつまずき、そのまま立て直せず非正規雇用で働く人は多い。その人を社会で支える手立てがあればいいのだが」。そう語るのは認定NPO法人With優(米沢市)の白石祥和代表(44・H12卒)だ。不登校や引きこもりの人の支援に加え、就労支援も手がける。国と県の委託を受け置賜若者支援サポートステーションを運営し、6月には南陽市の委託でサポート施設「Youth+(ゆうぷら)なんよう」を開設。現状にあらがいたくても、さまざまな要因で一歩を踏み出せない人たちを見てきた。

白石代表は「余裕や趣味、遊びに充てるお金がなく、人との関わりが減って強い孤独感を抱える人は多い」と指摘する。経済面の不安から未婚の人も多く、年金加入期間が短い上、保険料未納期間もあり、低年金に陥る恐れもある。参院選で氷河期世代への支援策は争点の一つだが、「国は実態を把握できていないのではないか」と疑問視する。

ただ、氷河期世代には、あと20~30年、働ける期間がある。「収入が全ての尺度ではないが、安定すると選択肢が広がるのは確かだ」と話す。「新たな挑戦を始めるには十分な時間で、きっかけさえあれば踏み出せるはず。自己実現のため、希望をかなえられる支援制度があると良い」と見通す。

氷河期世代にとっては、公務員になるにも競争倍率が高く「狭き門」。公立校の教員や公務員の選考試験に挑戦しても受からず、民間企業への就職に切り替えたとしても、内定を得られなかったり、非正規だったりするケースも多かった。

山形労働局の島田博和局長は、氷河期世代は希望通りの就職がかなわず、非正規雇用や不安定な職歴を余儀なくされた人が多いと指摘。「キャリア形成や賃金水準で長期的な格差が生じる要因となった」と説明する。氷河期世代の正社員と、短時間勤務を含む非正規雇用との間で、賞与を除く給与額は全国平均で115万円の差があるという。島田局長は正社員への移行をサポートする助成金支給や。リスキリング(学び直し)支援などに取り組んでいるとしつつ「キャリア上の不利が処遇格差や不安定な生活基盤に影響している」と課題を挙げた。

2025年7月7日山形新聞より