高齢化課題・若手の事業承継後押し

米沢市窪田に1日、内科や整形外科、リハビリテーション科の「ほさか窪田クリニック」が開院した。市が昨年度創設した診療所開設支援補助金の活用第1号で、前三友堂病院長の穂坂雅之医師(58)が院長を務める。同補助金は、開院資金を支援し新規開業と承継を後押ししようとし医師会と連携し設けた。活用例が出たことで、市内で進む医師減少への歯止めにつながるか注目される。

穂坂雅之医師らがテープカットをして開院を祝った「ほさか窪田クリニック」=米沢市

全国的に開業医の高齢化と偏在、後継者不在による診療所の減少が課題になっている。この10年間の診療所減少率は山形、酒田、鶴岡、米沢の4市で比べると、米沢が17.5%と最も高く、酒田15.2%、鶴岡8.2%、山形1.0%の順。開業医の平均年齢も米沢が65.5歳と最高で、酒田65.2歳、山形63.8歳、鶴岡62.8歳と続く。

さらに米沢市内では65歳の開業医のうち、35%余りは後継者のめどが立っていない。実際に2020年からの6年間で診療所13カ所が閉院。このまま減少が続けば、市内の1次医療は崩壊し、2次医療を担う病院の負担は大きくなる。

市が設けた補助金は開院資金の一部として最大1千万円を助成する。対象の主な診療科は不足が著しい小児科、泌尿器科、耳鼻咽喉科としているが、地域医療維持のため視聴が必要と認めた科目も対象になる。建物や駐車場の新設と取得、改修、医療機器と備品の購入、診療所の運営経費に充当できる。市医師会に加入し、市内で診療を10年以上継続することが条件だ。

多額の自己資金も必要なため、錯塩度は申請がなかった。同様の制度を設けている他自治体も利用者確保に苦戦し、福島県では3年目にようやく1件目の助成が決まった。2年目で申請のあった同市は、まずまずの滑り出しと言える。

ほさか窪田クリニックは市街外北部の窪田地域に位置し、2月に閉院した診療所を改装した。その南西に位置する塩井地区でも8月に診療所が閉院しており、クリニックは空白域を埋める役割が期待される。穂坂医師は東京都出身で、昭和大医学部卒。出身地で開業する考えを持っていたものの、補助金の存在が同市でも開業を後押しした。

佐野隆一医師会長(S47卒)は、市内での医師減少に危機感を示しつつ、「自然体の医療に貢献してほしい」と穂坂医師への期待を語る。穂坂医師も自らの例が、若手医師が補助金を活用し市内で開業、事業承継するモデルケースになりたいと話す。

近藤洋介市長は他にも申請を検討する医師がいると明かす。医療機器は高額なものが多いほか、物価高を受け建設費は高騰し、多額の資金を受け取れる補助金は魅力だろう。その知名度を上げるために県内外の医師に売り込む必要がある。米沢は豊かな食と自然、歴史、文化がアピールポイントで、三友堂看護専門学校があることで診療所スタッフを確保しやすい。他自治体と差別化できる点を周知すれば、さらに活用は増えるのではないか。

2025年10月9日山形新聞より