認定NPO法人With優代表・白石祥和さん(H12卒)=20250906山形新聞より

社会全体が取り組むべき課題・職域越えた連携必要

国内では2024年の1年間で、529人の小中高生が自ら命を絶った。子どもの数が減り続けているにもかかわらず、過去最多になった。この2年間では千人を超える子どもが自ら命を絶っている。先進7か国(G7)の中で、10代の死亡原因第1位が自殺なのはわが国だけだ。この衝撃的な現状、事実に、そう思えない社会こそが問題だと思う。

私は9月11日、山形市で開かれた県自殺対策推進会議に出席した。本会議は自殺対策に関連する専門機関を中心に構成され、県から自殺者の現状や今後の計画について説明があり、出席者が意見交換した。

社会課題について話し合う際は当事者性が大切だと思うが、会議の場には当然、自ら命を絶った方の声はない。私が現団体を立ち上げるきっかけの一つに、同級生が自ら命を絶ち、そのご家族と話をしたことがある。そのご家族は子どもの死を誰にも伝えられず、何の縁もない場所に引っ越してしまった。

羅列した数字の奥に、どれほどの悲しみがあるのかと考えると言葉にならない。不登校や引きこもりと同じく、自殺も表面化しない社会課題の一つだ。だから、共感性の欠如や、そっとしておいてほしい家族の気持ち、喪失感があり、介入する、想像する難しさがあるのかもしれない。

529人の自ら命を絶った子どもたちの気持ちを知り得ることは不可能だが、少なくとも、この世界でもっと生きたかった子がきっといた。私たち大人がつくった、今の社会構造に殺された子どもたちでもあると思う。

県は自殺対策計画の数値目標として、26年までに人口10万人当たりの自殺者数を15.1人以下、年間自殺者数を152人以下にすると掲げている。そのほか評価指数には、心のサポーター養成者数やSOSの出し方教育の実施校割合も設定している。

私は意見交換の中で、「県として小中高生の自殺をゼロにすることを目標にできないのか。私たち大人が今、本気で取り組まなければ何も変わらないのではないか」と意見した。目標を達成することは大切だと思うが、むしろ小中高生の自殺をゼロにするという目標の下、私たちがどう行動変容するのか、どう社会を変え、つながるのか、議論すべきではないだろうか。

子ども家庭庁は23年、子どもの自殺対策緊急強化プランをまとめた。しかし私は、子どもを守るために動く主体は国ではなく、顔が見える関係性、信頼関係を構築できる県や市町村であるべきだと考えている。

子供の自殺防止は社会全体が取り組むべき課題だ。一様に提供する教育があれば、子ども一人一人のリスクに合わせて個別対応することも必要だと考えている。行政や学校、専門職、NPOが時にその職域を越え、子どもの命を守るために連携することが欠かせない。そして何より、私たち大人が、孤立せず、SOSを出すことのできる当たり前の社会をつくることが大切だ。

「子どもは社会を映す鏡」と言われるように、変わるべきなのは子どもではなく、社会であり、私たち大人である。経済政策ももちろん大切だが、子どもが自ら命を絶ってしまうような社会なら、どんな政策も意味はない。最上位の取り組むべき課題として向き合わなければならない。

(米沢市在住)

2025年10月10日山形新聞より