塗装業界デジタル化貢献へ

「静電気を有効活用したい」と語る山形大工学部の杉本俊之教授=米沢市・山大米沢キャンバス

私たちの身の回りにはさまざまな物が存在し、その全てが電気を持っている。プラスとマイナスの2種類の電気を持つため、接触や摩擦によって電気のバランスが崩れると静電気が発生する。髪の毛や服がまとわりついたり、パチッとした痛みを感じたり、厄介者に感じる人が多いだろう。工学部の杉本俊之教授(57・S62卒)=静電気工学、高電圧工学=は、その静電気を有効活用する研究に取り組む。

杉本教授が開発した非接触型表面抵抗・体積抵抗測定法は、電極を物体に接触させずに静電気の動きやすさ(電気抵抗)を計測できるため、塗装面や凹凸面など触れたくない部分の抵抗計測に適する。地元企業の技術相談から研究を着想し、ポータブル型のプロトタイプ制作にこぎつけた。

現在は樹脂膜の劣化具合を調べる塗膜センサーへの展開に力を入れる。「塗膜の電気抵抗を計測することで劣化の度合いを判定し、最適な塗り替え時期の予測が可能になる」と杉本教授。この技術では新たな塗膜が乾いて硬くなるまでの状態変化も計測でき、施工不良が検出できるという。実際の運用現場での実証試験を重ね、現在の破壊試験に変わる非破壊試験法としての実用化が見えてきた。

この中で、インフラ塗膜の「塗りむら」の大きさによる機能低下も目の当たりにした。そこで、強力超音波と静電気を使った塗りむらの少ない外装用スプレー塗装方法と、ロボット塗装への展開にも取り組んでいる。塗装業界はデジタル化が遅れているが、センサーを用いて情報を検出し、デジタルデータを可視化するセンシング方法と、新たな塗布方法により、業界のデジタル化に貢献しようと挑戦し続けている。

地球誕生時から存在する静電気。「大昔からある現象だが、いまだにわからないことがあり、いろいろな応用方法も見つかる。それが興味深い」と杉本教授。研究には終わりがない。

Bリーグに熱中

杉本俊之教授は米沢興譲館高、山形大工学部、山大大学院で学び、そのまま1996年に助手として工学部に赴任した生え抜き。長く産学連携担当を務め、地元企業との関わりは深い。趣味は自身もプレーしたバスケットボール観戦で、最近はBリーグに熱中。米ボストン大への留学経験もあり、プロバスケ・NBAのボストン・セルティックスが好きだという。

2026年4月25日山形新聞より