山形新聞、山形放送の8大事業の一つで、健康寿命の延伸に向けて身近な病気をテーマに最新の医療情報を伝える「県民健康講座」の2026年第1回講座が4日、山形市の県看護協会会館で開かれた。山形大学外科学第二講座病院教授の塩野知志氏(S60卒)が「肺がんってなに?―知っておきたい最新情報」、県中央病院副院長の櫻井直樹氏が「胆のうは取っても大丈夫?~胆石からがんまで優しく解説」と題してそれぞれ講演。市民ら約150人が肺がんや胆のうの病気の早期発見と治療、予防のため、定期的な検査や生活習慣を整える重要性を学んだ。講演要旨を紹介する。
山形大医学部外科学第二講座病院教授・塩野知志さん(S60卒) 塩野知志(しおの・さとし)60歳(S60卒)。米沢市出身。県立日本海病院や国立がん研究センター東病院で勤務し、県立中央病院で呼吸器外科部長を経て2022年4月から現職。日本胸部外科学会理事。世界肺癌学会メンバー。
肺がん手術 劇的に変化
肺がんは、肺自体の細胞が遺伝子の変異によって悪性化したものである。肺は血流やリンパ流が非常に豊富なため、他の臓器に転移しやすいという特徴を持っている。現在最も多いのが、女性やタバコを吸わない人にも増えている「腺がん」。このほか肺の付け根にできやすい「扁平上皮がん」、進行は早いものの抗がん剤や放射線治療が効きやすい「小細胞がん」がある。
肺がんは初期症状が出にくく、せきやたん、胸痛が出る頃には進行していることが多い。診断には画像検査が不可欠であり、定期的なレントゲン撮影が基本になる。より精密なCT検査は微細ながんを発見できるが、過剰診断や被ばくのリスクもあるため、現状ではヘビースモーカーへの検診が推奨されている。
がんの進み具合を表す「ステージ」についても触れたい。ステージはあくまでも医師が治療方針を決めるための分類。他の臓器に転移した状態のステージ4は「イコール死」ではなく、諦めずに治療を続けることが何よりも重要だ。治療には手術と薬物療法、放射線治療があり、原則として転移がないものは手術や放射線治療、転移がある場合は薬物治療を行う。
最近の外科手術はかつての大きな切開から、傷口が小さい胸腔鏡手術や「ロボット手術」に進化した。ロボット手術は緻密な操作で細い血管を正確に処理することができ、出血が少なく安全性が高いのが特徴だ。術後の管理も劇的に変化している。かつては2週間ほどの入院が必要だったが、山形大などでは術後わずか2時間でベッドから起きて歩行を開始し、水分の摂取を始める。この早期離床により、80代の高齢患者であっても早期退院が可能となる。
薬物療法では「免疫チェックポイント阻害薬」という新薬が大きな成果を上げている。がん細胞が免疫細胞にかけているブレーキを解除し、本来人間が持つ免疫力を活性化させてがんを攻撃する。劇的にがんが縮小し、手術可能になった進行がんの例もある。
肺がんの予防には何よりも「禁煙」、そして日常の「運動」が極めて有効だ。散歩などの簡単な運動でも体力を高める効果がある。情報を集める際はネットの不確かな情報に惑わされず、「日本肺がん学会」や「国立がん研究センター」などの信頼できる専門機関の情報を有効活用してほしい。
2026年6月11日山形新聞より





