胸に鷹山公の志 行政、民間の隙間課題へ挑む
「生まれ育った米沢の課題に、垣根を越えて挑戦したい」。米沢市の若手経営者らが、まちづくりを担う団体を立ち上げた。団体の名前は「ウコギ社」。食べられる垣根として、米沢藩9代藩主の上杉鷹山が栽培を奨励したウコギに由来する。視線の先にあるのは、行政と民間の領域の間にある未解決の諸課題だ。人口減少などの現代の米沢の危機に対して、偉大な先人と同様に立ち向かおうとしている。
コロナ禍の昨年6月に任意団体として立ち上げ、今年6月15日には「ウコギ社一般社団法人」として法人化した。メンバーは36~41歳の8人。経営者が中心だが、デザイナーや市役所職員も加わる。
取り組みが始まったのは2019年。高校の同級生(H11卒)の小嶋健市郎さん(41)=清酒製造、佐野洋平さん(40)=水産卸売、兵庫濃さん(40)=デザイン業、高橋光一さん(41)=市役所職員=の4人が地元の課題について話し合ったのがきっかけだった。それぞれの分野で仕事に打ち込む中で、不惑を前に気付いたのは「行政も民間も拾いたがらないところに課題が多い」という現実だった。20年春には「まちづくり会社」の設立を本格的に考え始めた。
そんな時、米沢を襲ったのが新型コロナウイルス感染症だった。自分たちの能力やつながりを生かし、市内の飲食店のテークアウト情報をまとめたウェブサイトを1週間で立ち上げた。行政や商工会議所も素早く協力してくれた。
意図しない形のスタートだったが手ごたえをつかみ、以後はウコギ社の名前を掲げて取り組みの幅を広げた。4人の同級生の酒井登さん(41)=冠婚葬祭、遠藤勲さん(38)=観光施設勤務、宮嶌浩聡さん(37)=冠婚葬祭業、網代修さん(36)=建設業=も仲間に加わった。
ウコギ社のまちづくりのコンセプトは「小さなエリアのブランド力を高めることで、地域全体に好影響を与えて活性化につなげる」という考え方だ。本年度、市の補助金を得て同市本町3丁目の旧郵便局建物のリノベーションを計画しており、周辺地域のブランディング構想も進めている。プロジェクトごとにチームをつくり、外部と協力しながら活動を始めている。
メンバー全員に共通するのは「このままでは大変なことになる」という危機感だ。法人の代表に就いた小嶋さんは「自分たちの動きをきっかけに、まちの課題を解決しようとする人が増えることも目標にしたい」と話している。
2021年7月11日山形新聞より