講演する対木さおりさん(H5卒)

庄内県勢懇話会第277回例会が26日、鶴岡市のグランドエル・サンで開かれ、有限責任監査法人トーマツリスク管理戦略センターシニア・マネージャーの対木さおりさん(H5卒)が「2022年の経済展望~中長期の視点から」と題して講演した。対木氏は新型コロナウイルス禍の中での世界経済の動向を解説し、「ウィズコロナに世界が変わる中、日本は研究開発費用や教育投資などイノベーション促進のための制作が急務」などと強調した。以下は講演要旨。

マクロ経済の分析などを担当するセンターに所属している。オミクロン株が流行しているさなかだが、ウィズコロナの経済に向かわなければならないとして、海外では徐々に行動制約を解除する動きもみられる。日本もコロナの先を見て考える時期に来ている。

オミクロン株流行までは日本経済は順調に進んでいたが、(コロナ対応の改正特別措置法に基づく)まん延防止など重点措置の適用による影響などで成長は低くなると見込まれる。米国、英国では感染者数が一定のピークから落ち着いており、日本も現在は我慢の時期だが、ピークアウトはある。先行きに希望を持つことに微妙な思いを抱くかもしれないが、欧州では2月以降、域内の渡航制限を解除する動きもある。

日本の輸出はここ数年、米国の生産動向に連動してきた。米国では消費者物価指数も上がっており、日本でも資源や食料品の関係で物価上昇の圧力が高まっている。アジアの新興国は米国向け貿易の伸びが大きくなっており、米国での生産が落ち込めば影響を受ける可能性が高い。また、中国が経済を犠牲にしてコロナの拡大を抑えるゼロコロナ政策を長期化した場合、世界経済を押し下げることも考えられる。

日本では資金が伸び悩み消費にも力強さがない。雇用者数が伸びて賃金が上がっても、社会保障の負担が増えている構造的な問題がある。日本経済の実力が下がっていくのはどの研究機関、専門家にとっても共通した見方だ。人口が減少し働き手の比率が減る。パートタイム勤務や、リタイア後の再雇用の割合が増えることで全体的な労働時間は減少している。生産性の向上につながるイノベーションが重視される。

しかし、日本の研究開発費の支出は低迷し、韓国や台湾と比較しても伸びや規模の面で劣りつつある。新しい世代を担う若年層の比率が低い中で労働力の低下を防ぐためには、一人一人の力を伸ばす必要があり、教育投資が重要な論点となる。日本の少子化の背景には子育てに対する負担感が強いことに加え、政府への信頼の低さもあるのではないか。支援制度をただつくればいいわけではない。金融機関の役割も大きくなっている。ある程度のリスクがあっても投資し、収益を図る意識が求められる。

最後に、イノベーションに関してお話したいことがある。グローバルな競争力を持つ企業が、東京から飛行機で移動するような地域に研究施設を設け、役員会もそこで開いている。同じ人たちがいる同じ場所に毎日通う環境では、イノベーションは生まれるわけがないというのが理由という。世界的にも同様の動きがあり、山形の環境はそれに合う。交通の便に優れた立地条件を最大限に生かしてほしい。

2022年1月27日山形新聞より
新型コロナウイルス禍の中での経済展望について理解を深めた庄内県勢懇話会 =鶴岡市・グランドエル・サン