焙煎したコーヒー豆を手に利用者やスタッフと談笑する中沢謙一さん(S62卒)=米沢市、就労継続支援事業所ラ・ヴェリタ

米沢市の元小学校教諭中沢謙一さん(56・S62卒)=芳泉町=が今年1月、同市大町3丁目にコーヒー豆の焙煎と販売を手がける就労継続支援事業所ラ・ヴェリタを開いた。体調やメンタル面が不調となり働けなくなった教え子などの姿に、社会復帰に役立ちたいと一念発起した。「障害がある人だけでなく、さまざまな理由で仕事を辞めた人の手助けをしたい」と、未来ある若者たちに目を配っている。

心身不調の教え子らのため熱く

販売しているコーヒー豆。両側のパッケージは利用者がデザインした。

中沢さんは市内小学校で30年以上教壇に立った。教員生活の間には、学校になじめず不登校やひきこもりになった子どももいた。社会に出て働き始めたが、人間関係に悩んで退職を余儀なくされた教え子もいた。「生きづらさを感じる若者が無理なく働けて、一般就労につなげられる場所をつくりたい」との思いを強めた。昨春に退職して運営会社を設立し、空き物件を利用して開設した。

ラ・ヴェリタの定員は、利用者と雇用契約を結ぶA型就労10人、雇用契約を結ばないB型就労10人に計20人。市内外の10~60代の20人近くが利用し、半数以上が10~30代の若者だ。販売は平日の午前8時から午後4時半まで。利用者は焙煎、豆の選別、袋詰めなどを行い、賃金を得る。

利用者の20代女性は、高校を卒業して一般企業で10年ほど働き、人間関係に悩み昨年退職した。医師から適応障害と診断され、再就職も考えたが不安がつきまとった。そんな時、恩師の中沢さんが事務所を開設すると家族を通じて知った。

一般企業ではないことに抵抗もあったというが、働き始めると現在の自分にあっていると感じたという。「体調に応じて仕事内容を変えてくれて、それでも働くことが難しければ休める。本当に助かる」。主に焙煎を担当し、「今の就労時間は4時間ほど。徐々に伸ばしたい」と笑顔で話した。

ラ・ヴェリタは、利用者が経済的な豊かさを得ることを目指す。事業所を継続させるためには安定した売り上げが欠かせず、利用者と営業目標を共有し、生産目標も立てている。30代男性の利用者が「事業所を長く続けるためにも、おいしいコーヒーを作り利益を上げたい」と話すなど、意欲にもつながっている。

「仕事をするか、しないかの二択ではなく、その中間の働き方もあることを知ってほしい」と中沢さん。支えるのは豆を購入してくれる人々。「利用者が作ったコーヒーを飲むことで、応援団になってほしい」と来店を呼びかけている。

ラ・ヴェリタで販売するのはブラジル産コーヒー豆で、酸味とコクのバランスの良さが特徴。浅いりの「鷹山」と中いりの「龍」で、粉末も販売する。200グラム880円(税込み)。利用者がデザインしたパッケージもある。問い合わせはラ・ヴェリタ0238(33)0262。

2024年6月3日山形新聞より