仁科記念賞のメダルも
宇宙物理学者で、昨年9月に87歳で急逝した白鷹町名誉町民・佐藤文隆さん(町出身)の蔵書約2千冊が、同町立図書館へ新たに贈られた。物理学の優れた業績を表彰する賞で、ブラックホールの構造を解明する「冨松-佐藤解」を発表した際に受けた仁科記念賞のメダルなども寄せられ、世界的研究者を支えた知の業績が改めて故郷に託された。
佐藤文隆さんから寄贈された仁科記念賞のメダル=白鷹町立図書館 佐藤さんは、日本人初のノーベル賞に輝いた湯川秀樹博士の孫弟子に当たり、ブラックホールや宇宙論の分野で国際的な功績を残した。生前、自身の死後に「研究人生の『着物』と表現する蔵書が散逸することを案じ、2019年から町に3千冊超を寄贈。町立図書館内には「佐藤文隆文庫」が設けられている。
京都市内の自宅には多くの書籍が残されていたが、その扱いについても保存や活用を前提とした整理を望んでいたという。親交のあった編集・文筆業の艸場(くさば)よしみさん(67)=同市=を中心に、遺族や関係者が「遺産プロジェクト」を立ち上げ、12月下旬に仕分け作業を実施。史料的価値の高い書籍や手書きノートは母校の京都大、学生向けの専門書は京都橘大(同市)にそれぞれ引き取られ、町には社会科学や文学などの教養書が届けられた。
書籍の多くには付箋や書き込みも残り、思索の軌跡が刻まれている。現在は書庫で保管されているが、中川栄子館長(65・S54卒)は「蔵書とともに、文隆先生が故郷に帰ってきたと感じる。本や言葉を通じ、科学に関心を持つ子どもたちが育つ場につなげたい」とし、同文庫のリニューアルも視野に入れる。
難解な講義に学生が音を上げると、「そう簡単に分かってたまるか」と返したという逸話が残る佐藤さん。艸場さんは「先生にとって本は、答えを示すものではなく、考え続けるために身にまとうものだった。その『人生の着物』を次の世代に渡そうとしているのだと思う」と語っている。
2026年1月10日山形新聞より





