南陽市観光協会長・結城秀人さん(右・S54卒)

品質向上、ブランド化・官民連携で観光盛り上げ

新型コロナウイルスの5類移行後、打撃を受けていた南陽市の観光業は大幅に回復しています。春からはJR東日本の「重点販売地域」に本県が指定されるなど、今後の飛躍に期待が高まっています。

本市には、歴史ある温泉地で、日本さくら名所100銭として桜まつりを開催している赤湯温泉があります。同温泉はテレビ東京の「日本全国言って良かった温泉地ラランキング・ベスト100」で7位となり、南陽市を訪れた観光客の満足度の高さが明らかになりました。受け入れ側のおもてなしのレベルの高さは総合的に評価されたものと感じています。

ほかにもサクランボやリンゴ、ブドウなど、豊富な観光果樹園、東北の伊勢と称される歴史ある熊野大社があります。日本一の歴史を誇る菊まつり、バラまつり、空のスポーツやスカイフェスティバルが楽しめる南陽スカイパークも含め、県内外はもちろん、国外からも誘客できる豊富な観光資源が自慢です。

さらなる目玉として着目しているのは「ブドウとワインの里」の再興です。赤湯地区には歴史あるワイナリーが4社、新進気鋭の自然派ワインを売りとするワイナリーが2社あり、多様で個性あふれるワインの産地となっています。2023年度の国税調査では、本県は全国4位の日本ワインの産地です。赤湯温泉には県内23カ所のワイナリーのうち、6ワイナリーが集積しており、地理的表示(GI)に指定されたGI山形ワインの中でも、存在感のある地域となっています。

ですが残念ながら、「ブドウとワインの里」の認知度は、国内ではそれほど高くないのが現状です。深掘りすると、本市は山形県のブドウ発祥の地であり、県内3位の出荷額を誇る産地です。さらにワイン醸造の歴史は明治時代の中ごろまでさかのぼり、国内2番目の歴史があります。個性あふれる6社が開業している歴史と多様性を有する日本ワインの里であり、ブドウ狩りやワインの試飲だけでなく、収穫・醸造体験、ワインフェスティバルなどワインに関する様々な体験ができます。

しかし、ブドウ栽培の現場では、農家の高齢化、後継者不足に起因する離農、規模の縮小が続いており、市内ブドウ農家(経営体)は、10年の430から、20年の265と、10年間で6割まで減少しており、産地の存続も危惧されています。

歴史のある「ブドウのまち南陽」を守り発展させるため、次のことが必要と考えます。一つ目は外国人観光客の誘致や受け入れのためのインバウンド事業。二つ目はブドウの品質向上やブランド化、加工品の開発など産地活性化プロジェクト。三つ目はワインの生産と消費の拠点としてのワインツーリズムの推進です。

「モノ消費」から「コト消費」の観光ニーズの変化は、ほかの観光資源との融合で、さらなる顧客満足の追求を可能にします。赤湯産ワイン・ブドウのブランド化、高付加価値化を加速させ、ブドウ産業の復活・活性化につなげるため、観光協会としてリーダーシップを発揮し、官民の連携によって市内観光をさらに盛り上げたいと思います。

(南陽市在住)

2024年3月8日山形新聞より