母校を訪れ、奨学金制度設立への思いなどを語る山口祥二さん(S22卒)=米沢市・米沢興譲館高

縫製会社を経営してきた米沢市大町3丁目の山口祥二さん(93・S22卒)、靖(やす)さん(85)夫婦が、資材を投じて給付型奨学金制度を創設した。経済的困難を抱えながらも進学を目指す置賜地域の学生に対して、返済不要の奨学金で援助する。7日祥二さんが母校の米沢興譲館高(曽根伸之校長)を訪れ、思いを語った。

祥二さんは同市出身で、太平洋戦争で親を亡くす困難な状況でも勉学に励んだ。米沢織の卸売問屋の養子となり、同校の前身で旧制中学時代の米沢興譲館中を1947(昭和22)年に卒業した。米沢工業専門学校(現在の山形大工学部)で学んだ後、山形市で「ワボースタイル」を創業し、ニット製品の縫製などを手掛けた。

後継者がいなかったことを踏まえ、山口さん夫妻は高齢になってから会社を畳むなど、自身の財産を整理。地元米沢の発展に寄与する形で寄付しようと考えた。同校の同窓会などと検討を重ね、過疎化が進む地方都市の未来を担う子どもたちが活躍できる機会を確保するため、5億円を原資として奨学金制度を設けた。

奨学金は1人当たり年間60万円、4年間で計240万円を給付する。毎年3人の認定を予定している。対象は置賜地域の県立高校出身の学生で、世帯収入が400万円以下の家庭に限る。対象者の選考は、奨学金の管理などを担う公益財団法人公益推進協会(東京)が行う。

制度の説明を受け、曽根校長は「経済的な事情に制限されることなく、子どもたちの進路の選択肢が広がることは大変ありがたい。立派な大先輩の姿を目標に勉学に励むよう、生徒たちにも伝えたい」と感謝の言葉を述べた。祥二さんは、全国で活躍する同級生を誘って米沢で何度も同総会を開催したことなど、思い出話も披露。「米沢のために寄付したことを冥土の土産にして、亡くなった同級生たちにもたくさん自慢したい」とおどけながら、古里への愛情を語っていた。

2022年9月10日山形新聞より