NPO法人米沢市芸術文化協会長・佐藤嘉一さん(S41卒)

若い世代を呼び込む ■新事業にチームで挑戦

「会員の高齢化で活動の存続が心配される」「若者の参加がほとんどない」・・・。米沢市芸術文化協会加盟団体のほとんどが存続の危機感を持ち、年々その度合いは深まっています。

私たちはこの難局を乗り切るため、各世代から新しい仲間を迎える新たな事業に挑んでいます小学生対象の「こども文化クラブ」と一般対象の「市民芸文講座」の開講です。どれだけの参加者を集められるか。創意工夫を凝らし、魅力的に楽しく、辛抱強く・・・。この上なく難しい事業への挑戦です。

人生100年時代に向け、高齢者の健康長寿促進、若い世代の生きがい探し、中高年の余暇時間利用など、芸術文化に触れて新しい自己発見の旅路を楽しむことが推奨されています。こども文化クラブと市民芸文講座を軸に、青少年の文化活動とコラボするなどして、接触が少ない世代との交流を広げ、講座参加を勧める機会をつくり、打開策を模索しながら前に進みたいと考えます。

新型コロナウイルス第7波の影響を受け、開催延期や中止が出ていますが、「こども文化クラブ」は7講座。経費は協会事業費と文化庁、荘内銀行からの助成金で賄い、子どもたちは喜んで取り組んでいます。「市民芸文講座」は12講座。協会事業費と参加者の参加料で展開しています。参加人数は講座によりまちまちですが、多数の参加者や即入会者が出た講座もあり、いずれも参加した人たちは興味関心を寄せ楽しんでくれているようです。

軌道に乗るまで4~5年は、プラス思考で辛抱強く講座経営のあり方を磨いていく必要があります。生徒募集の方法、内容の組み立て、指導技術などの課題はもちろんですが、「この講座にどんなメリットがあるのか」という解釈を明確にし、共有することが大事です。

まずは講師陣がやすやすと楽しくやり遂げる力量を示すことが基本です。なぜやすやすと楽しくやれるのか。受講者は講座の中で何度も試行錯誤をして挑戦し、諦めずに繰り返し、やがて「やればできる」という達成感や自信を獲得する修練のメリットを実感するのです。そして新しい仲間と、これまでにはなかった自分の生き方を楽しむ文化の力を意識します。高齢者は若い人と触れ合うことで喜びを感じ、若い世代は年長者との触れ合いによってもともとの力に厚みが増し、ともに成長していきます。さらには自己の修練、仲間との切磋琢磨を通して成果発表をすることも醍醐味です。第三者を前に発表することで公益性を発揮し、文化振興の担い手として社会貢献にもつながります。これらすべてが、人生を謳歌するための尊い自己発見となります。

教え伝えることのメリットをしっかりと認識して講座経営に当たれば、着実に花が咲き、実を結びます。こうした軸を太くし、歯車を回すことが肝要ではないでしょうか。そのために講座経営はチームを組んでの経営でなければなりません。リーダーのもと、チームが息を合わせて教えてくれているのだという信頼感を、受講者が感じる環境をつくることが事業成就のポイントです。こうした事柄を踏まえ、人の輪を広げ難局の克服に立ち向かいます。固くなった土を起こして熱気を帯びた改革の風を鋤き入れ、種をまき、各団体の創意でそれぞれいろいろな花を咲かせ、芸術文化人生を謳歌する活気を呼び戻せるよう念じます。

2022年9月21日山形新聞より