米沢出身、明治神宮や上杉神社設計
築地本願寺や明治神宮、平安神宮を設計し、建築界で初めて文化勲章を受章した建築家、伊東忠太(1867~1954)をどうすればより知ってもらえるか。出身地の米沢の市民らが「妖怪」に目をつけ、地元にちなんだお菓子の新商品が誕生した。
米沢藩医の次男として生まれた伊東は、それまでの「造家学」を「建築学」に改称するように提唱。東京帝国大学教授を務めたほか、神社仏閣設計の第一人者として県内でも上杉神社(米沢市)や明善寺(山形市)などを手がけた。
「米沢市名誉市民第1号でもあるのに、地元の人にあまり知られていない。建築界の草分け的な存在が、米沢から出たことを知ってほしい」
地元の伝統工芸や歴史を発信しようと活動するNPO法人「米沢伝承館」理事長の斎藤英助さん(68)らが着目したのが、伊東の「妖怪好き」だった。
伊東は建築の際に不可思議な動物や妖怪で外観を飾ることがあり、築地本願寺や湯島聖堂、一橋大学兼松講堂が知られている。「怪奇図案集甲」として妖怪画約400点も残し、日本建築学会のホームページでも紹介されている。
米沢伝承館はこの中から20点を選び、2018年から、著作権をもつ同学会から使用許諾を受けようと交渉をつづけてきた。
学会側は出身地・米沢からの申請を受け、積極的に協力。22年7月、4年がかりで使用契約が結ばれ、伊東の妖怪画を使った商品が全国で初めて誕生した。
商品は県産米100%のかりんとうで、味は「うこぎ味噌」「黒糖」の2種類。ウコギは米沢藩9代藩主・上杉鷹山が食用を兼ねた生け垣として栽培を奨励した。黒糖は沖縄県の多良間島産。伊藤が首里城を調査して保存に尽力したほか、最後の米沢藩主・上杉茂憲が沖縄県令を務めた縁もあり使った。
それぞれ1袋が入った詰め合わせ商品の箱に、10種類の妖怪画が描かれている。箱の掛け帯の色は首里城をイメージした赤。こちらにも10種類の妖怪画がデザインされた。
斎藤さんは「妖怪画はとてもかわいく、異次元の世界のようでおもしろい。箱は食べ終わった後も小物入れなどに使い、忠太博士のことに興味を持つ人が増えてほしい」と期待を寄せる。
米沢伝承館が販売する「お米のかりんとう」の詰め合わせ商品は1458円(税込み)。「道の駅米沢」で購入できる。
2023年7月21日朝日新聞より