漫画版「銀河鉄道の夜―完結編」を描き上げた漫画家・ますむらひろしさん(72・S46卒) 「宮沢賢治の世界に、どっぷりと漬かってしまいました」。1983年、宮沢賢治の生前未発表作品「銀河鉄道の夜」の登場人物を猫に変えて漫画化し、85年には映画化もされた。それでも「賢治の世界観を描き切れていない」と思い悩み、40年かけて「完結編」を完成させた。八王子市夢美術館(東京)で今月末まで特別展を開いて展示している。
「銀河鉄道の窓から本当に星は見えるか。『あらゆる光でちりばめられた十字架』とはどんな色か。悩み続けました」
山形県米沢市出身。小中学校で学ぶ賢治の物語は「どこか恐ろしかった」。
ところが18歳で東京に出た時、「注文の多い料理店」の序文を読んで震えた。
〈わたしたちは(中略)きれいにすきとおった風をたべ、桃いろのうつくしい朝の日光をのむことができます〉。故郷・東北の情景が目に浮かび、夢中になって賢治の世界観を漫画に描いた。
登場人物を猫にしたのは、水俣病の影響だ。汚染魚を食べた猫が神経を侵され跳ね回る映像を見て、「人間はなんてむごいことをするんだ」と憤り、弱者の物語でもある賢治作品の主人公に据えた。
当時は賛否両論あった。でも映画を見た子どもたちからは「身近な猫が主人公なので、難しい物語がスッと入ってきた」との感想が寄せられた。
「天国で賢治さんに感想を聞いてみたい。きっと笑って許してくれると思う」
2025年8月16日朝日新聞より




