山形市の山形美術館で15日に開幕した「ますむらひろし展」は、猫などをモチーフにした唯一無二の幻想的な世界観が楽しめる。米沢出身の漫画家ますむらひろしさん(69・S46卒)=千葉県・野田市=に作品への思いや展覧会の見所などを聞いた。
賢治作品・経験の良さ教えてくれた
-猫をモチーフにした作品が多い。ますむらさんにとって猫はどんな存在か。
「猫は人間がいないとなかなか生きていけない。猫が幸せに暮らしているかどうかは、自然がどう扱われているのかと密接な関係にある。人間とすごく接近した自然の代表だと思う」
-同じ猫でもデビュー作の絵は怖く、代表作「アタゴオル」シリーズは愛くるしく、だいぶ印象が異なる。変わったきっかけは。
「若い時は心がすさんでおり、幸せな話を描きたいとは思わなかった。結婚して子供が生まれ、『アタゴオル玉手箱』(1984年)のころから穏やかな気持ちになった。『トト&ドス』は子育ての経験から生まれた話。心は経験を重ねることで変わっていく」
-宮沢賢治の童話を漫画化している。
「初めて感動したのは上京して読んだ『注文の多い料理店』の序文。作り上げられた文章はたくさんあるが、秋の山の寂しさなど米沢の感覚がよみがえり、賢治は本当に感じたことを書いていると思った。これまで自分が経験してきたことの良さを教えてくれた」
-作品を通し、読者に伝えたいことは。
「日本人は勤勉で一生懸命だが、自分のテンポで生きてもいいと思う。お金をかけなくても、風景や季節の中にあるきれいなものを味わえる。その感覚を大切にしてほしい」
-本展の見どころは。
「初公開の『銀河鉄道の夜・四次稿編』。85年に『銀河鉄道の夜』を描いて以来3度目となり、モノクロからカラーにした場面がたくさんある。この作品をはじめ、これまで描いてきた何万枚の中から約400点を厳選した。多くの人に楽しんでほしい」
2022年7月16日山形新聞より
ヒデヨシとはい、チーズ・展覧会関連イベント
「ますむらひろし展」が開幕した15日には、関連イベント「ヒデヨシと写真を撮ろう!」が行われ、ファンらが「アタゴオル」の世界から飛び出した猫のキャラクター・ヒデヨシとの記念撮影を楽しんだ。
来場者はポテッとした体形ににんまりとした表情を浮かべたヒデヨシと並び、ポーズをとるなどして撮影した。中には「猫ちゃん!」と最初は喜んでいたが、近づくとその大きさにおびえる子どもも。ますむらさんと同郷だった亡き夫の影響でファンになったという山形市双月町1丁目、無職武田万亀子さん(80)は、ぬいぐるみを持参し「ふくよかな等身大のヒデヨシに会えてうれしい」と話した。撮影イベントは17日午後2時と、18日午前11時と午後2時にも行われる。
2022年7月16日山形新聞より