エム・エス・アイ社長 金子昌弘さん(69・S45卒)

―業界、自社の現状は。

「ITは今やあらゆる産業、生活、社会に欠かせない。さらにAI(人工知能)などへの注目が高まっていたところに新型コロナウイルス禍でテレワークやオンラインが普及し、将来も需要拡大が見込まれる。しかし競争が激しく企業間格差が大きい。仕事の7割が首都圏に集中し、そこから地方企業に下請けの仕事が出る構造だが、当社は一度も下請けをしたことのない100%元請けの企業。課題解決のためお客様とともに考え、最適なシステムを提案する仕事だ。提案型だからこそ社員の人間力が重要。どんな仕事でも必ず人と関わる。当社は人が武器というアナログなIT企業で、社員の人間力はどこにも負けないと差別化してきた。顧客を開拓し、取引先は30年で750社に拡大した」

―求める人材は。それをどう採用し、育てるか。

「欲しいのは明るく元気で積極的な人材。当社のモットーだ。創業当初から採用に力を入れており、知識や技術より人間性を重視する。優秀な人でも1人でできることには限界があり、みんなで知恵を出し、協力した方が良い仕事ができる。人に好かれることは重要で、好かれればお客様に選んでもらえ、同僚に助けてもらえる。すべての土台は人間性。立派な技術者である前に人間力を高めることが大切だ。人間力のある人間は仕事でも伸びる。新人から社長まで全員が共に学ぶビジネスマナースキルアップ研修や、毎年大寒に行う座禅に取り組む。自分を磨くためだ。最もユニークなのが、小さな企業が力を合わせて難局を乗り越えるドラマを丸一日かけて一緒に鑑賞し、仕事の在り方を考える研修。会社の清掃は全社員で行い、しゃきっと業務を始められるよう毎朝のラジオ体操も続けている。みんなで仕事を進めるため協調性や連帯感を大切にする」

―最も影響を受けた人物とその教えは。

「1人目は京セラ創業者の稲盛和夫さん。『動機善なりや 私心なかりしか』など数えきれない教えがある。イエローハット創業者で掃除哲学に学ぶ取り組みを広めた鍵山秀三郎さんからも大きな影響を受けた。私が声を掛け、社員たちも山形掃除に学ぶ会で精力的に活動している。一番の教えが『凡事徹底』。誰にでもできることでも何十年と徹底して続ければ誰にもできないことになる。経営コンサルタントの一倉定さんの『会社は社長の器以上に大きくならない』も衝撃を受けた学びだった。ほかの方々からも多くの教えがあり、とくに率先垂範、凡事徹底を座右の銘としている。

■金子昌弘(かねこ・まさひろ) 米沢興譲館高卒業後、東京芝浦電気(現東芝)に2年半勤務。明治大商学部に入学し、都内企業の正社員として夜間に働きながら卒業。山形市のトヨタカローラ山形、通信機器・コンピューター販売などのタフビジネス勤務を経て、1992年、40歳でエム・エス・アイを創業。高畠町出身。

■エム・エス・アイ 経営システムの統合化を目指す意味のManagement System Integrator(マネジメント・システム・インテグレーター)の頭文字。販売・生産・日程管理などのシステム開発を軸にホームページ、ウェブ店舗構築も手掛ける。米沢、酒田、仙台、福島県郡山、さいたま市に拠点を持つ。船井総合研究所ITビジネス研究会の従業員満足度調査で2020年まで5年連続大賞。資本金2千万円。社員数69人。本社所在地は山形市松栄1の5の7。

私と新聞 経済人の考え方学ぶ

「山形県で経済活動をしていたら県内の出来事は最大の関心事。山形にいる限り、山形新聞は欠かせない」。金子昌弘社長は毎日1時間ほどかけて山形新聞に隅々まで目を通す。職場を含め、3紙を購読。トータル2~3時間をかけて幅広い情報、話題を自分の中に入れる。IT企業の社長のためタブレットなどで読むのかと思いきや「紙で読むのがいい」と笑う。

山形新聞の紙面の中で、とくに読み込むのが経済面のNIBフロントライン。交流のある経済人が数多く登場しているが、知らなかった一面を記事で知ることがある。「物事の考え方や、なぜこの事業を展開しているのかなど、学ぶことが多い」と話した。

2021年9月24日山形新聞より