災害時に歯科の分野が担う役割について話す三宅宏之医師=山形市・遊学館

三宅医師「勇気持って働いて」

東日本大震災から10年の節目に合わせ、山形歯科専門学校(山形市、大貫英一校長・S48卒)は23日、同市の遊学館で防災講話を開いた。宮城県石巻市で身元確認を担った歯科医の三宅宏之氏(49)が当時の写真や動画を示しながら講演。肺炎を防ぐための口腔ケアの重要性にも触れ「災害時は勇気を持って検案所や避難所で働いてほしい」と呼び掛け、歯科衛生士を目指す生徒ら約140人は熱心に耳を傾けた。

三宅氏は震災直後から約1カ月間ほぼ休みなく、800~900の遺体と向き合った。自身の医院も被災し、多くの患者も亡くなった。石巻市の被害は死者・行方不明者が3500人超と最大規模。「少し前まで元気だった人が、ただの番号で呼ばれるのはつらい」。次々と運び込まれる遺体を前に、遺族の元に返したいとの思いで必死だったと振り返った。

身元確認で重要になる遺体の口元写真も見せた。全国の歯科衛生士専門学校における災害教育が不十分だと考えるからだという。「一度見ておけば初めて見た人とは、行動力が違ってくる」と訴え、災害時には力になってほしいと生徒にエールを送った。講演を聞いた3年小林優里さん(21)は「歯科衛生士にとって、ご家族のサポートが重要と感じた。災害現場でのイメージがわいた」と話した。

講演は同校の永田一樹副校長との縁で実現した。山形県歯科医師会が震災時、全国随一の規模で人員を派遣したこともあり、同校では災害教育に力を入れている。大貫校長は「災害時に貢献できるよう、より正確な知識を教えていきたい」と話していた。

2021年9月24日山形新聞より