川西町が遅筆堂文庫の一画に再現した井上ひさしさんの書斎=町フレンドリープラザ

川西町フレンドリープラザ内に再現した、同町出身の作家・劇作家井上ひさしさん(1934~2010年)の書斎が完成し、11日に内覧会が開かれた。町が整備し、神奈川県鎌倉市の自宅で生前使用していた状況に近づけており、井上さんの息づかいが感じられる空間となっている。

蔵書や愛用品並べ、実物に近づけ

同プラザの開館30周年記念事業の一環で、井上さんの古里に書斎をよみがえらせたいという妻ユリさんの発案を受け、井上さんの蔵書を多数収蔵しているプラザ内の「遅筆堂文庫」の一画に、井上さんが1989年から亡くなるまで過ごした、鎌倉市の書斎を再現した。面積は13平方メートルほどで、総事業費は1331万円で、今年1月29日に着工し、2月29日に完成。その後、蔵書や物品を並べるなど、実物に近づけるための仕上げをしてきた。

机や椅子、本棚、蔵書に文房具。長年愛用してきた品々が置かれている。井上さんが執筆している姿が浮かんでくるような雰囲気を演出している。約820冊の本が書斎にあった通りに並んでいる。辞書に加え、創作活動のために参考にしたロシアや沖縄をテーマにした書籍などもある。机の上には、愛煙家だった井上さんが付けたとされる焦げた痕も残されている。

今年は井上さん生誕から90周年。同文庫の阿部孝夫館長(S48卒)は「鎌倉の自宅にいるかのように再現できた。来館者に井上さんの本や愛用の品々に触れてもらい、作品にも興味を持ってほしい」と語った。

開設披露式を13日に行った後、一般公開する。14日には井上さんを偲ぶ文学忌「吉里吉里忌」が開かれる。

2024年4月12日山形新聞より