今年で「100歳」を迎えたフラワー長井線は、乗客減少による経営難や設備の老朽化など、さまざまな課題を抱え、いかにして進んでいくのか。運営する第三セクター・山形鉄道の中井晃社長(S48卒)に聞いた。

山形鉄道の中井晃社長(S48卒)。地域の支えに感謝し、これからのフラワー長井線について思いを語った。

-全線開通100周年を迎えたことの受け止めは。

「一つの事業を100年続けるというのは大変難しいこと。地域の皆さんに利用してもらってきたことが一番の原動力であり、深く感謝している」

-長井線が走り続けられた理由とは。

「長井線は最上川舟運に代わる輸送手段となり肥料や工業製品の原材料、石炭などを地域に運んだ。農地開墾や工業発展に貢献し、工業関係企業を沿線に誘致できたことで通勤での利用が増えた。一方、現在は高校生の通学が利用の7割を占め、通勤は少ない。貨物から通勤、通学へと変化するニーズにうまく対応できたことが大きいのではないか」

-廃線危機を乗り越え、今も経営難が続く。

「採算性を確保するという点でローカル線は非常に厳しい状況にある。利用の中心である高校生が少子化の影響で減少する中、次の打開策が見いだせずに苦しんでいるのが実情だ。観光活用やグッズ販売により、少しでも収入を確保できるように努めている」

-ハード面の老朽化により、定時運行の観点での支障が出始めている。

「車両、信号装置など設備全体が古いのが課題。費用が大きいため、長い間修理しながら使い続けてきたが、そろそろ更新しなければトラブルにつながりかねない。上下分離方式により、鉄道インフラ管理の主体である県や沿線自治体にもその必要性を認めてもらっており、経営改善計画の見直しにむけて協議を進めている」

-これからの長井線は。

「先人が残してくれた鉄道という公共交通機関をいかに利用してもらうか。これからも知恵を絞り、『あってよかった』と言ってもらえるような鉄道づくりを目指す。高校生の通学手段としての役割を維持することはこれからも必要。その上で、イベント列車などの企画を通し、さまざまな人が乗る機会を創出していきたい」

2023年5月5日山形新聞より