県議らの視察を受け、取り組みを紹介する宮嶋浩聡代表(H15卒)=米沢市・マチスタジオ

県内屈指の観光地として知られる米沢市で、総合的な観点で観光戦略を実行する米沢市版のDMO(観光地域づくり法人)が、2022年5月の発足から3年目に入った。市内観光団体などで組織する米沢観光推進機構(以下機構、会長・近藤洋介米沢市長)が戦略決定、観光まちづくり会社「プラットヨネザワ」(宮嶋浩聡代表・H15卒)が実行役を担う枠組み。観光情報のデータベース化に向けた基盤整備は一通り完了し、今後はマーケティング・プロモーション事業が本格化する。

地域の「稼ぐ力」引き出す

上杉の城下町として知られ、豊かな自然や温泉など観光資源が豊富な米沢市。四季を通じて多くの観光客が訪れるが、これまで観光戦略に必要な情報収集が十分ではないとの課題があった。新型コロナウイルス禍で観光産業は大きな打撃を受け、地域全体で的確な観光マネジメントを行う必要性が一段と増した。苦境に立つ観光関係団体からの要請は強く、市や米沢商工会議所、米沢観光コンベンション協会など34団体・企業の構成で機構が発足した。

実行組織のプラット社は、今年3月までの2年間を「合意形成やシステム構築機関」と位置付け、観光施設に車両分析カメラを設置するなどして人流を把握する他、宿泊予約状況、置賜地域の観光地やイベント情報などを収集。土台となるデータベースを構築した。

この間に収集したデータを活用し、前倒しで地域の魅力創出に向けたイベントも企画した。上杉雪灯篭まつりで桜の木をピンク色にライトアップするプロジェクト、米沢上杉まつりに合わせた有料の戦国探求学習プログラムなどが主な例で、関係団体と連携して実施。地域の先進事例として、今月8日には県議らが視察に訪れ、宮嶋代表が「DMOは地域の稼ぐ力を引き出す組織。地域を良くしたいと思う人たちは多く、活動を実現させていきたい」と思いを語った。

DMOは、国の観光関連補助金の受け皿としての機能も果たす。地域一体の観光拠点再生や高付加価値化を後押しする観光庁の補助制度では、プラット社が宿泊・飲食事業者や観光施設運営事業者など15社の改修計画を取りまとめて申請。昨年12月に採択された。

同市の小野川温泉では、コロナ禍で少人数の旅行客が増えたため1室あたりの売り上げが落ち、経営に苦しむ旅館は多い。補助金を活用し、6施設が客室の改修などを計画している。同温泉の高砂屋では、客単価を引き上げて利益を確保するため、今年10月までに客室数を半分に減らし、すべてに半露天風呂を備える計画だ。高砂屋の奥山琢専務(51)は「複数の旅館が大規模改修を目指し、温泉街にも前向きな雰囲気が出てきた」と話す。

「伸びしろがあるインバウンド(訪日客)の誘客にもつなげたい」と宮嶋代表。蓄積したデータを元に、誘客促進に向けて関係団体などと知恵を絞り、地域一丸で観光戦略を進めてほしい。

2024年5月30日山形新聞より