錦三郎さんの没後25年記念展がスタートした。長男の啓さん(S38卒)が寄贈した蔵書や資料などが並ぶ=山形市・県立図書館

故・錦三郎さんの長男・啓さん(南陽市)

父が解明した現象「雪迎え」を知ってほしい―。クモの研究者や歌人として知られる故・錦三郎さんの長男啓(あきら)さん(77・S38卒)=南陽市三間通=が、父の蔵書や資料など約800点を山形市の県立図書館に寄贈した。19日に同館で始まった没後25年記念展「雪迎えを知っていますか」で紹介しており、愛用のカメラや「雪迎え」をとらえた写真、三郎さんの短歌など人となりを表す品々が並んでいる。

三郎さんは1914(大正3)年生まれ。小中学校で国語教諭を勤め、南陽市漆山小校長で退職した。仕事の傍ら、置賜地方で晩秋は「雪迎え」、早春は「雪送り」と呼ばれる、空に白い糸が流れる光景に興味を持ち、観察を開始。クモが糸を上昇気流に乗せて漂う現象だと突き止めた。新種のクモも複数発見した。日本エッセイスト・クラブ賞や斎藤茂吉文化賞などを受賞。15歳で歌人結城哀草果に師事した。

父の資料など800点県立図書館に寄贈

19日に寄贈品の目録贈呈式が行われ、啓さんが佐藤佳奈江館長に手渡した。啓さんは父とよく南陽市の白竜湖に行き、クモや植物について教えてもらったという。「クモが飛び立つまで時間がかかる。写真を撮ろうとずーっとカメラを構えているので、近所の人から不審に思われていた」と語った。

「雪迎え」という言葉は三郎さんの研究で広く知られ、小説や俳句などに使われるようになったという。啓さんは「詩情にあふれるいい言葉。外国文学にも同じような表現があり面白い。最近は見られなくなったが、こういう現象や言葉があることを知ってほしい」と話した。

5月まで展示

展示は寄贈品を中心に約700点を紹介。著書に加え、空飛ぶクモを題材にした故矢口高雄さんの漫画や教科書などもある。佐藤館長は「貴重な資料をいただき展示が充実した。今後も活用していきたい」と語った。5月8日まで。

2022年3月20日山形新聞より