「移住、就農に結び付く取り組み続けたい」

昔ながらの農業体験を通じて共生社会の重要性を学ぶ高畠町の「屋代村塾」は、都市部の大学生が地元農家と交流する合宿や、田舎暮らしを体験してもらう「農楽校」の実施など、多彩な活動を繰り広げている。代表の古川和夫さん(78・S38卒)=同町・安久津=に設立の経緯や今後の展望などを聞いた。

-設立の経緯を教えてください。

「地元出身の故・大塚勝夫早稲田大教授(S38卒)が資材を投じて1994年に立ち上げました。大塚教授が塾長となり、『教育は人を、農業は土を耕し、共に命を育む』の持論の下、ゼミ生を対象にした農業体験合宿を実施していました。現在は松原豊彦立命館大教授が塾長を務め、新型コロナウイルスの感染が拡大する前の2019年までは両大学の学生など、多くの若者が合宿に訪れていました。私は塾の運営を担当しています。大塚教授は高校の同級生でもあり、その思いを継ぐため活動に力を入れています」

-どのような活動をしていますか。

「早稲田大生など、都市部の学生の農林体験合宿の受け入れを行っています。幅広い分野の講師から学ぶ『寺子屋講座』も実施しており、30人ほどいる県内外の塾生や地域の人々が聴講します。しかし、コロナ禍の影響で、どちらも19年を最後に実施できていない状況です。稲作や大豆の収穫などを体験する農楽校はずっと行っており、5月に田植え、6月に大豆の種まきを実施しました」

-活動を通して、どのような成果を感じますか。

「都市部の学生は、農業体験を通して人生観が変わったり、食べ物に関心を持つようになったりするようです。学生を受け入れる地元農家は若い人々との交流を楽しみにしており、農作業を手伝ってくれることにありがたみを感じています。現在、合宿を実施できない状況にあるのは残念です。農楽校の体験などを通して、家庭菜園に挑戦するなど、生活の一部に農業を取り入れてくれる人がいるのはうれしいことです」

-今後の展望を聞かせてください。

「新型コロナが収束したら、また学生を受け入れての合宿を再開したいです。農業や農村に関心のある方などに対して、田舎暮らしを体験できる場を引き続き提供していくため、農楽校の取り組みを継続していきます。高畠町への移住を促し、新規就農に結び付くような取り組みを続けていきたいです」

2022年8月14日山形新聞より