「直江兼続の地域づくり」

元高校教諭で米沢市の観光ボランティア・おしょうしなガイドを務める香坂文夫さん(75・S41卒)=同市城北2丁目=が、上杉家の重臣直江兼続の都市計画にスポットを当てた「直江兼続の地域づくり」を自費出版した。兼続は治水・利水を中心に現在にもつながるまちづくりを進めており、香坂さんは「ものすごい都市計画者」と話す。

地形生かした用水網

香坂さんは土木技術や都市計画を専門とし、米沢工業高、置賜農業高で教えてきた。NHKの大河ドラマ「天地人」が放映された2009年におしょうしなガイドとなり、そこから兼続について本格的に学んできた。元々の職業柄、都市計画の視点で歴史を見ることが多いという。

本書では、江戸時代の米沢城下絵図を用いながら、治水・利水をはじめとした兼続のまちづくりについて分かりやすくまとめている。中でも香坂さんが注目するのは、城下で使用する生活・かんがい用水を確保するために整備した御入水堰と、南原地区のかんがい用水と掘立川の水源となった猿尾堰だ。「会津若松から米沢に移り住んだ家臣団と家族が生活するために、水はなくてはならなかった。兼続はその水を巧みに城下に引き込んでいる」と香坂さん。同じ場所に新たに整備し直された現在の両堰の姿も紹介している。

城下町の構成についてまとめた章では、これを目的に訪れる人もいるという「武者道」や、白布にあった鉄砲の鍛造場などにもページを割いた。

香坂さんは「兼続は米沢の扇状地の地形を生かして、水が広く行き渡るネットワークを構築した。約3万人が生活できる城下町をつくり上げ、今の私たちの生活も同じ堰で潤っているのはすごいことだ」と語る。千円。米沢観光コンベンション協会、上杉城史苑で取り扱っている。

2022年8月15日山形新聞より
香坂文夫さん(75・S41卒)