連携の課題と将来像について語る仁科盛之三友堂病院理事長(S41卒)=米沢市

慢性期の医師集めに力・地域とネットワーク構築

―米沢市の公立、民間の2病院が合築し、今月1日に始動した新病院は、市立病院が手術や救急などの急性期医療を、三友堂病院がリハビリや在宅復帰を目指す回復期を担い、連携する。併せて、医療の質の向上と経営の効率化を目指す地域医療連携推進法人「よねざわヘルスケアネット」もスタートした。

「両病院の課題をすり合わせ、どう克服するかということに尽きる。自治体病院の責務がある市立病院と、民間病院で業績を重視する三友堂では企業風土が違う。両病院はともに、医師の不足や高齢化という課題を抱えてきた。一緒になることで大学も医師を派遣しやすくなるだろう。究極的には、市立病院が地方独立行政法人に移行すると、人事交流を含め、いろんな点が有利に働く」

―連携後に三友堂が担う医療像とは。

「三友堂はこれまで担ってきた急性期を手放し、症状が落ち着いた慢性期の医療を中心に行うことになる。役割分担に伴い、幅広い症状を診る総合診療医師をはじめ、がんの緩和医療、在宅医療、リハビリに精通した人材などの医療スタッフをどう集めるかが課題だ。慢性期を診る医師の総数自体が少なく、開院当初は不足している。医師の学会なども通じて確保に努めたい」

―新病院の開院で、病床が集約された。

「2019年度のデータに基づき、今後の患者見込みを推計したところ、心配はないとされている。人口そのものが減っており、新病院で患者を受け入れきれなくなることはない、と考える。ただ、三友堂の病床も限りがある。うまく患者の受け渡しができるよう、両病院と地域の開業医、福祉施設などがネットワークを構築することが重要だ」

―市立病院に救急が集中する、との懸念がある。

「市立病院に(負担が)集中しすぎないよう、三友堂では誤嚥(ごえん)性肺炎や尿路感染症など、寝たきりで元々免疫が低下している人が急性増悪するケースを引き受ける。夜間は高齢者施設の職員も不安になり、救急を要請するのだろう。夜間診療は市立病院の対応で、日中に来院してもらえるよう施設側に呼びかける。施設と嘱託医師が連携し、早めに対応できるかが鍵になる」

―三友堂が移転し、通院が大変になる人もいる。

「患者の希望を踏まえた上で、容体が安定している人を地域の診療所にお願いし、悪化したら三友堂で受け持つことにしている。新病院に集約された三友堂リハビリテーションセンターと同じ場所に、介護医療院と診療所を新設する。ここが受け皿の一つになるのではないか」

2023年11月5日山形新聞より