全国的不足、常識破りの解消策

白鷹町鮎貝の酒造会社「加茂川」(小島一晃社長・H16卒)は、地元の酒販店「ヤマシチ商店」(鈴木広貴店主)で、同一銘柄の日本酒をさまざまな色の瓶に詰めて販売する取り組みを始めた。全国的な酒瓶不足の解消策として、同社の杜氏を兼ねる鈴木店主(52)=杜氏名・七十郎=の発案で実現した。銘柄ごとに同色の瓶を使う業界の常識を覆し、「色は違えど味は変わらず」を提唱し、持続可能な開発目標(SDGs)の実現につなげる。

純米酒「加茂川」を手にする小島一晃社長(右・H16卒)と鈴木広貴店主。空き瓶を無駄なく活用しようと、異なる色の瓶に同一銘柄を詰めて販売し始めた。=白鷹町鮎貝「ヤマシチ商店」

同店陳列棚には緑、青、茶、無色などさまざまな色の一升瓶が並ぶ。ラベルには同じ純米酒「加茂川」の文字。中身も同一だ。新型コロナウイルス禍による日本酒消費量減少を背景に、生産調整や瓶の流通量減少によって全国の酒蔵が酒瓶の確保に苦慮する中、空き瓶を無駄なく使う狙いだ。

空き瓶は通常、酒販店が回収し酒造会社や問屋に渡る。酒造会社には使わない色の瓶が届き廃棄することもある。イメージの統一や売り上げへの影響を懸念する酒販店への配慮から、一般的には違う色の瓶で販売することはないという。

ここに目を付けたのが、前身の老舗「加茂川酒造」の頃から酒造りに関わり、同社の事業継承を機に昨年杜氏についた鈴木店主。「見た目よりも中身が大事。色が異なる瓶をあえて使うことが資源を無駄にしないというメッセージになる」と小島社長(37・H16卒)に持ちかけた。

小島社長は「保管していた空き瓶の在庫を一掃できた。新瓶の購入量を抑えられ、わずかだが仕入れ経費抑制にもつながっている」とし、「資源を大切にすることが、瓶色の統一よりも価値がある」と話す。

鈴木店主も「こうした取り組みが広がり、消費者の理解が深まることで、より無駄のない社会につながるのではないか」と期待を込めた。

2023年6月5日山形新聞より