地域住民との交流をベースに創作した落語が披露された
=米沢市・小野川温泉

コロナ打撃の温泉街、落語界に元気

 落語家が地域に滞在し、その土地を題材にしたご当地落語を披露する寄席が9日夜、米沢市小野川温泉の登府屋旅館(遠藤直人社長・H6卒)で開かれた。落語の力で地域の魅力を発信しようという試み。小野川を皮切りに赤倉温泉(最上町)など山形、福島両県の5温泉地で展開し、コロナ禍で痛手を受ける温泉街、落語界を盛り上げる。

 高座に上がったのは、落語家立川こしらさん、立川寸志さん、立川志ら門さん、柳家緑助さん。小野川の住民との交流を基に創作した「小野川」「蛍のリレー」などの新ネタを披露し、オンライン視聴を含め、約80人の聴衆を沸かせた。

 一行は6日に小野川入りし、地元住民6人にそれぞれ1時間ほど、土地の歴史や魅力などを取材したり、街並みや史跡に触れたりした。与えられたのは3日という限られた時間。旅館での“合宿”でアイデアを出し合い、四つの話を生み出した。「土地の人に話を聞くことで特有の物語ができた。10~20席できるのではと思うぐらい面白かった」と台本を担当した作家のナツノカモさん。立川こしらさんは「落語界でも初めての試みではないか。地元の人と一緒に、次世代に語り継がれる作品に育てていきたい」と語った。

 企画した遠藤社長は「点でしか捉えられていなかったものを物語にしてもらえた。土地の新たな魅力になってくるのではないか。同様の取り組みは他の地域でもできると思う」と話す。

 赤倉温泉の寄席は12月9日。他に福島県の土湯など3温泉地で12月中ごろにかけて行う。各温泉地と落語に興味を持ってもらおうと、寄席終了後、全てのネタの台本をウェブ上で公開。各旅館館主の独断で最優秀落語を選び、動画投稿サイト「ユーチューブ」で公開する。「ご当地落語」で検索する。

2021年11月12日山形新聞より