第56回県写真展で県知事賞・大泉忠夫さん(78・S37卒)

受賞作「古の参道」は水位が下がり神社の鳥居や並木跡が現れた桧原湖(山形・福島県境付近)の雪景色。昨年3月の早朝、磐梯山噴火(1888年)の悲しい歴史に思いをはせて写した。「撮影中ほんのいっとき雪が降り、噴火で亡くなった人々の魂に見えた。『忘れないで』と言っているようで鎮魂の祈りを込めてシャッターを切った。導かれて撮らせてもらった」としみじみ語る。

元は置賜地方の高校体育教師。1992年の49歳時には米沢商業高女子ホッケー部の監督を務め、べにばな国体で優勝に導いた。だが無理がたたったのか体調を崩した。その時、健康づくりにと妻が進めたのが写真。心機一転やり始めると「行動の幅や出会いが広がり、新しい世界が開けた。カメラが最良の健康器具に思えて没頭した」

自然をテーマに米沢市のクラブで腕を磨き、2000年の第34回県写真展で初入賞、同年の二科会写真部展で初入選した。和紙にプリントするなど独自の作風を追求し個展を複数回開催、各コンテストで入賞を重ねた。今では県写真連盟常任理事、二科会写真部山形支部長を務め、写真教室の先生になった。「感謝の心で被写体と向き合うこと」が信念だ。

今回の受賞を報告した恩人がいる。昨年逝去した県内を代表する写真家飛塚英寿さん。家を訪ねると娘さんが快挙を記した新聞紙面を仏壇に供えていてくれた。涙をこらえて遺影と向き合った。「自分の作品を『好きだ』と言って励ましてくれたことを忘れない。飛塚先生のように写真を深く愛し、多くの人と楽しさを分かち合いながら頑張っていきたい」と力を込めた。米沢市内で妻と2人暮らし。

2022年3月2日山形新聞より