「子どもに知ってほしい」・伊藤仁一さん「アクアポニックス」装置自作

米沢市下花沢2丁目の伊藤仁一さん(79・S37卒)は6年前から、大阪・関西万博でも展示が予定されている「アクアポニックス」に注目し、自作の装置で実践している。水産養殖と水耕栽培を組み合わせたシステムで、水を節約でき、環境に優しい循環型の仕組みを、多くの人に知ってもらいたいと話している。

伊藤仁一さん(S37卒)が自作したアクアポニックス。ニシキゴイの水槽と、植物を育てる容器の間で水が循環している=米沢市下花沢2丁目

アクアポニックスは、水産養殖(アクアカルチャー)と水耕栽培(ハイドロポニックス)を組み合わせた循環型の生産システム。1980年代米国発症とされる。

水槽と植物を育てる容器をパイプなどでつなぎ、魚の排せつ物を含む水を微生物が分解し、植物に供給する。植物は養分として吸収し、浄化された水が水槽に戻るという仕組みだ。水を替える必要がなく、植物は農薬や肥料を与えなくても育つ利点がある。水資源が少ない地域での活用が期待され、SDGs(持続可能な開発目標)を掲げる2025年の大阪・関西万博の大阪ヘルスケアパビリオンで紹介される予定だ。

伊藤さんは20年ほど前から趣味でランチュウやニシキゴイを飼育している。高齢で水を替えるのが負担になり、雑誌で情報を得た妻・のぶさん(74)に勧められて始めた。ポンプでくみ上げた水槽の水をろ過し、植物に供給している。土の代わりに微生物のすみかとなる「ハイドロボール」を敷き詰め、魚の排せつ物を養分に分解している。養分が吸収された水は水槽に戻る。

コイなどは気持ちよさそうに泳ぎ、セロリやトマト、大葉などは庭の畑のものよりも大きく育っている。伊藤さんは元気なうちに、システムを自作する手法を伝えたいと考えている。「環境に優しいシステムで、未来を担う子どもたちに知ってもらいたい」と話した。

2023年6月5日山形新聞より