最高賞の県知事賞(左上)など上位作品について講評する鈴木一雄さん =山形市・山形美術館

第56回県写真展の作品審査が13日まで2日間、山形市の山形美術館で行われ、審査員の自然写真家鈴木一雄さん(68)=東京都=が各賞を決めた。最高賞の県知事賞に大泉忠夫さん(78・S37卒)=米沢市笹野本町=の「古の参道」が選ばれた。

同作品は本県と福島県境付近にある桧原湖(北塩原村)を撮影。1888(明治21)年の磐梯山噴火でできた湖で、旧米沢街道沿いの桧原村が水没した。今でも水位が下がると神社の鳥居や参道の朽ちた並木跡が現れる。大泉さんはこの場面の哀愁漂う雪景色を写した。鈴木さんは「桧原湖周辺は今でこそ観光地だが、磐梯山噴火では500人近い死者が出たとされる。この作品はストロボ光を軽く当てて雪の降る様子をしみじみと捉えている。寒々しい光景の中に悲しい物語や歴史を感じさせ、表現内容が非常に深い」と講評した。

新型コロナウイルス禍の影響で非公開審査となったが、鈴木さんは「被写体の“声”を聞く」「一写入魂」「リアリズムの追求」という自らの撮影信条を言葉の端々ににじませ、熱心に選考した。「コロナ禍でも2千点以上集まったのは素晴らしい。上位作品はいずれも見応えがある」とし「撮影後の画像加工に頼ると不自然さが増して被写体そのものの力が落ちる。一発撮りで完成させる気持ちが大切」と語った。最後に「常に新鮮な被写体を求め、自ら感動し、愛情を注いで撮影してほしい。写真は人生を豊かにしてくれる」とエールを送った。

同展は県写真連盟と山形新聞、山形放送、山形美術館が主催し、県と県生涯学習文化財団が共催する県内最大の公募写真展。出品者444人の計2037点から入賞12点、準入賞と努力賞各10点、入選447点を決めた。審査員と無鑑査認定者の作品を含む計508点を24日~3月21日、同館で展示する。各賞と入選の名簿は今週末、入賞12作品は3月初めの本紙に掲載予定。(後略)

2022年2月15日山形新聞より