◎大正時代の2度の大火も逃れ大切に受け継がれてきたお雛様
◎展示会場自体が、現代の技術では再現不可能とされる貴重な建造物
米沢市にある「東光の酒蔵」は安土桃山時代に創業し、後に上杉家御用酒屋を承った小嶋総本店が営む酒造資料館です。明治時代の酒蔵にタイムスリップしたかのような趣がある空間が広がり、その規模は東北最大級。お雛様が展示されている母屋はボルト一本使わない伝統的なくさび工法で建築されており、現代の技術では再現が難しいとされる歴史的な建造物です。
その母屋の座敷に展示されるお雛様は、江戸時代中期から後期にかけて作られた享保雛など4組28体。大正時代米沢市を襲った大火の際には、土蔵の入り口をみそで塗り固めたことで奇跡的に守られたという物語と共に、小嶋家に代々受け継がれています。
展示期間:~4/3(日) 平日9:30~16:00、土日祝9:00~16:00
展示会場:東光の酒蔵(米沢市大町2-3-22)
料金:一般350円、中・高校生250円、小学生150円
休館日:期間中無休
問合せ:0238-21-6601
2022年2月26日山形新聞より
「続けていく」ということ
小嶋彌左衛門の名を代々襲名し、現在の当主(小嶋総本店会長)で23代となる小嶋家。当主の妻である淳子さん(小嶋総本店取締役・S49卒)によると、桃の節句にお雛様を飾るように、小嶋家にはたくさんの年中行事が伝わっています。20歳でお嫁に来て“若奥さん”となった淳子さんのため、お義母さんが書き残してくれたものを頼りに、家族を中心に可能な限り守り続けてきました。
ただ、時代は変わるもの。昔ながらの行事を続けていくのは大変な苦労が伴います。次の代には「自分たちにあったやり方で」と伝えているそうです。ただそこで、淳子さんの心に残るのは「全てをやめてしまわない。簡略化してでも残していけば再興することができる」という高田好胤氏(薬師寺元管主)の言葉です。「子どもの頃に家族で行った行事は貴重な記憶として残るでしょう。行事に込められた思いが伝わっていくことが大事だと感じています」
2022年2月26日山形新聞より