反射防止膜形成の新技術を共同で開発した伊藤浩志教授(左・S59卒)、沢村一実社長=米沢市・山形大米沢キャンパス

山形大は14日、カメラやセンサーに使われるプラスチックレンズの反射防止膜を、従来に比べ安価で容易に形成できる新技術を光学設計、超精密加工の技術開発を手掛けるIMUZAK(山形市、沢村一実社長)と共同開発したと発表した。需要拡大が見込まれる自動運転などへの応用を視野に入れる。

同大大学院有機材料システム研究科の伊藤浩志教授(高分子成形加工・S59卒)の研究室と同社が2017年から共同で研究に取り組んできた。

密度を変えたシリカ(二酸化ケイ素)のナノ粒子をプラスチック表面に交互に付着させることで、レンズへの映り込みを防ぐことに成功した。密着強度を高める点が難しく、シリカの量や加工時の環境などを試行してきたという。既に特許を取得し、今年6月には、プラスチック成形加工学会で、中小企業が開発した独創性の高い技術に与えられる技術進歩賞を受賞した。

反射防止膜をつくる工程としては、金属材料を真空で加熱してプラスチックに付着させる真空蒸着が主流。新技術は生産装置の導入費、材料費を含めて製造コストを削減でき、環境への負荷も抑えられるという。真空蒸着より、均一に膜を形成でき、センサーの誤動作防止にもつながる。

同社は現在、本格的な事業化に向けて取り組んでおり、国内外のスマートフォン用カメラレンズメーカーや自動車関連メーカーと共同開発を進めている。非接触型システムとして注目され、山形市役所で機器を試験導入している空中ディスプレーにも新技術が応用されている。

2022年7月15日山形新聞より