浜田広介記念館館長・金子研司さん(S53卒)

生誕130年・没後50年の節目 ■精神の継承 今後も

高畠町出身で「日本のアンデルセン」と称される童話作家・浜田広介は今年が生誕130年・没後50年の節目。その記念事業を、広介の孫浜田吾愛(わかな)さんを招いて、10月7日に同町の浜田広介記念館で開催した。

式典であいさつをした日本児童文芸家協会理事長の山本省三さんの言葉が印象的だった。それはある若い編集者が、浜田広介という作家は知らないが「泣いた赤おに」という話は知っており、民話だと思っていたこと。山本さんは「これは作家にとって理想の形。作者は忘れ去られても、作品は脈々と記憶の中に刻み込まれている。民話のように心の中に染み込んでいる」とし「浜田広介という童話作家は、私たち物書きの理想だ」と続けた。

そんな広介は、1898(明治26)年、高畠町一本柳(旧屋代村)に生まれ、幼い頃から母や祖母の語る昔話に涙していた。旧制米沢中学(現米沢興譲館高)を経て、早稲田大に入学した。そして童話「黄金の稲束」が大阪朝日新聞の懸賞に1等入選し、以後、善意の心をよりどころにして童話を書き続けた。作家人生五十余年にわたる作品の数は、童話・童謡も含めて約千編にもおよび、「泣いた赤おに」のほか、「むく鳥の夢」「りゅうの目のなみだ」など、歳月を経た現在も身近に存在している。

末永く後世に広介の作品をつないでいくため、記念館を1989年、高畠町に設立した。その翌年、ひろすけ童話が子どもたちに与えた大きな役割と、広介の偉大な業績をたたえ「ひろすけ童話賞」が創設された。この賞は人間の愛と善意に基づくひろすけ童話の精神を継承し、新たな童話の世界を創造する作家を顕彰することを目的として設けられた。第13回の受賞作はシンガー・ソングライターさだまさしさんの「おばあちゃんのおにぎり」。本年度の第33回ひろすけ童話賞から選考委員を務めている。

童話は、子ど もの世界だけにとどまらず、私たち大人にも多様な示唆を与えてくれる。高畠町は「童話の里」を掲げ、地域を挙げて良い本を読む習慣づくりに努めている。心豊かな人間を育むために読書の推進は欠かせない。これからも、記念館設立の趣旨と、教育・文化・観光の拠点施設としての使命を心に刻み、記念館のさらなる発展に力を注いでいきたい。

結びに紹介したい。広介は国語の教科書監修に関わっていたこともあり、その時に記したこんな言葉がある。「童話、広くは児童文学は、必ずその中に訓意を持つべきは当然のことであるが、その訓意があらわな徳目的なものになることは厳に戒めなくてはならない。人間らしい心、この一つが、内から起こる情操の育ちによって養われるようなものでなければならない。教科書の中の童話も、もとよりそうあるべきだと信ずる」

この広介の童話に対する思いを大切にして、訪れた方々がひろすけ童話の世界に浸ることで、温かい心が醸成されていく。記念館も、そんな時間と空間を提供できる場所であり続けたいと考えている。

(高畠町在住)

2023年11月10日山形新聞より