遠藤由美子さんのチョークアート展で作品の展示に携わった夫の正俊さん。人物画は会期を通じて展示するという=山形県上山市

上山市立図書館で企画展

オイルパステルという画材で描く「チョークアート」の企画展が、山形県上山市立図書館で開かれている。昨年秋に急逝した元中学美術教諭の作品を展示。制作期間はわずか約3年だったが、一人のアーティストとして生きた証しが黒いボードに定着している。

この元美術教諭は米沢市出身の遠藤由美子さん(S53卒)。1982年に山形大学教育学部を卒業し、米沢、南陽、上山、山形の各市などの中学校で美術や特別支援教育を担当した。

2018年、58歳で早期退職をした後、チョークアートを学んだ。創作の傍ら、インストラクターとして県内各地の絵画教室で魅力を伝えた。

チョークアートはイギリスのパブの看板が起源という説があり、オーストラリアへの移民が今世紀に入って現代アートとして確立したとされる。チョークと同様の形をしたオイルパステルで指を使いながら描き、様々な色調やグラデーションを表現する。

だが、昨年の夏に不調を訴えた後、ただちに入院。病気のため、約1カ月で急逝した。62歳だった。

遠藤由美子さん(S53卒)。大好きだった草間彌生さんの展覧会を鑑賞した際に撮影された=2017年、東京・六本木の国立新美術館

遠藤さんのチョークアートの師で山形市のさくらぎ工房代表、きくちともみさんは「チョークアートへの思いが強く、とにかく描くのが楽しいとおっしゃっていたので、急逝されたのは残念。多くの教え子さんも遠藤さんと一緒に絵を描く機会がなくなり、寂しく感じていると思います」と惜しむ。

落ち着いた色調 自身のスタイル確立

チョークアートの愛好者には目立つ色で華やかさを表現する人が多いが、遠藤さんの作品は穏やかな色の組み合わせで落ち着いた印象を与えたという。きくちさんは「ご自身のスタイルを確立されていたと思います」と話す。

遠藤さんの夫の正俊さん(63)は、病床にあった妻の言葉を覚えている。

「早く病気を治して、早くチョークアートを描きたい」

山形大の同じ課程の同級生だった由美子さんと結婚。早期退職をした後、自宅一室のアトリエで時間がたつのも忘れて、チョークアートを描き続けたという。店舗からの依頼を受けて作品を制作することもあり、新庄市の理容室や上山市のレストランなどで使われている。

クリスマスツリーを題材にした遠藤由美子さんのチョークアートの作品

上山市立図書館での由美子さんの企画展には、米大リーグで活躍している大谷翔平選手やイチローさんらの人物画、鮮やかな色彩の花を描いた作品などが展示されている。美術家の正俊さんは「チョークアートは様々な表現に拡張していく可能性を秘めている手法だと思う。この機会に、由美子が描いた作品を鑑賞していただければ」と言う。

会期は来年1月28日まで。期間中に展示替えをし、計43点が出品される。毎週水曜日と12月28日~1月4日は休館。

そのほかの作品を朝日新聞デジタルでご覧いただけます。

2023年11月24日朝日新聞より