定期的に勉強会や読書会が開かれる田沢寺 =米沢市

米沢市の山あいにある寺で、「お茶のみしゃかい学」と称した勉強会や好きな本を持ち寄っての読書会が定期的に開かれている。人口減少などで地域の寺の役割が変化する中、かつての寺子屋さながらに、年齢も職業もさまざまな人たちが定期的に集い、学んだり、コミュニケーションを深めたり、活発に言葉が飛び交う。

12月上旬、米沢市口田沢の田沢寺(でんたくじ・荒沢教真住職・S53卒)で、15人ほどが今年最後のお茶のみしゃかい学に参加していた。講師は洞松寺(長井市)の小野卓也住職(H4卒)。仏像を背に「自己とは何か」という深遠なテーマを東洋思想の視点で解き明かす。参加者からは「悪態をつくようになった親と気持ちよく過ごすにはどうしたら良い?」「子どもの自己肯定感を高めるために必要なことは?」といった質問もあり、悩み相談室のようになった。

取り組みを企画するのは荒沢住職の妻久美さん(47)。久美さんは川西町フレンドリープラザで25年間、図書館司書やホールで開催するイベント企画の仕事に携わってきた。自宅の寺を会場にした学びの場づくりは退職後に始めた。アイデアをひねり出すアウトプットの多い仕事を続けるうち「自分自身、学び直したい」という気持ちが高まったのがきっかけ。寺という場が、人が集まり本を読んだり自分自身を振り返ったりすることと相性が良いのでは、という思いもあった。

2カ月に1回のペースで開き、テーマは縄文文化から地域医療まで多彩。ゲスト講師には医師や住職、山形大工学部、県立米沢女子短大、東北芸術工科大などの教員を招いた。読書会はテーマを決めてお薦めの本を紹介し合うほか、1冊の本を深く掘り下げることもある。米沢市から参加する女性は「ここに来ると何かしら楽しいことがある。こういう場を知ることができ、ラッキーだった」と話す。

葬儀や法事を執り行うだけでなく、人々が集い、おしゃべりをしたり、悩みを相談したりする地域の公民館のような存在だった寺。人口減少や地域コミュニティーの変化により、そうした機能は薄れてきている。一方で、県内でも本堂を舞台にしたヨガの体験会が開催されるなど、新たな役割を模索する動きも見える。荒沢住職は「(時代が変わっても)人々が集まる場をつくる、それが寺の役割だと思う」と話している。

2021年12月31日山形新聞より