東町プラットフォーム会長・小嶋健市郎さん(H11卒)

米沢に人の滞留、交流起こす ■コミュニティー不可欠

皆さんは、日本の地方の町並みが近年、極めて似通ってきていることにお気づきでしょうか。国道沿いに大手チェーンの郊外型店舗が立ち並ぶ景色は、今や日本中の地方都市に共通する風景です。

人口や経済規模で大都市を上回ることは難しいですが、地方都市は、それぞれの土地で育まれた豊かな文化や個性を持っています。グローバル化が進み、地方の中小企業が世界へ進出したり、逆に世界から地方へインバウンド(訪日客)が訪れたりする時代です。その時に力を発揮するのが、各地域の個性のはずです。

チェーン店は便利ですが、一方でそれらに埋め尽くされた風景はまるで「フォーマット化された田舎」。とても均質的です。均質化されればされるほど、地方は強みになるはずの個性を失います。残念ながら私が暮らす米沢市も、例に漏れず、そのような状況になりつつあります。

そのため、私たちは米沢の中でも地域の個性が残る地域として、米沢市本町2丁目、3丁目にまたがる東町エリアに着目しました。東町は旧町名で、周辺では創業100年を超える味噌蔵や醬油蔵、日本酒の酒蔵、米沢織の織元が今も営業し、歴史ある神社や寺も残っています。上杉神社や山形大工学部旧校舎といった風情のある建築物も徒歩圏内です。

私たちは地域に残された個性を住民の皆さんとともに見直し、市民レベルで磨き上げるため、2022年に「東町プラットフォーム」という協議会を設立しました。市内の経営者でつくる民間まちづくり会社「ウコギ社」を中心に、東町上通り町内会、米沢市役所、山形大、米沢信用金庫、観光まちづくり会社プラットヨネザワなどが参画しています。これまで地域ビジョンを作成し、社会実験も進めてきました。

「まちづくり」は建物を建てるイメージが先行しがちですが、英訳は「コミュニティー・ディベロップメント(地域社会開発)」です。東町プラットフォームでは、地方でありがちな「自家用車で点と点でつなぐまち」ではなく、「人の居場所があり、人の滞留が起こるエリア」を育てることを目指しています。町内会の思いも大切に聞き、歩みを進めています。

昨冬は、東町にあるシェアオフィス「マチスタジオ」の1階開放エリアで、「東町ストリートこたつ」を企画しました。豪雪地帯の米沢で「雪が降る屋外でのこたつ」という異空間をつくり、1カ月半、ゲームをしたり、ラーメンの出前が取れたりするような場所にしたのです。

すると、高校生が宿題をしながら出前のラーメンを食べ、通りがかった近所のおばあちゃんと会話するなど、これまでとは違った人の流れや交流が生まれました。1カ月半の締めくくりとして行ったeスポーツ大会では、小学生40人の参加枠が短期間で埋まり、大会も大変盛り上がりました。「新しい友達ができた」という声もたくさん聞こえました。

景観づくりを考える上で重要かつ最も難しいのが、地域の方々に景観を自分事として捉えていただくことです。「建物は個人のもの、景観はみんなのもの」という言葉があります、地域の個性を育むためには、まずその地域に、住民自身が大切に感じるコミュニティーが必要不可欠だと思います。コミュニティーが育てば、地域の結束が強まり、景観を大切にする意志は構成されていくはずです。

亀の歩みではありますが、一歩一歩着実に取り組みを続けていく考えです。

(米沢市在住)

2024年6月7日山形新聞より