無農薬、無化学肥料栽培のコメ使用

水田を自走し、雑草の成長を抑制するロボット=米沢市

米沢市の小嶋総本店(小嶋健市郎社長・H11卒)は、雑草の成長を抑えるロボットを活用し無農薬、無化学肥料で栽培した酒米を使った日本酒の仕込み作業を、今月にスタートさせた。発売は今秋の予定。稲の病害対策などの課題はあるが、地域の農業や多様な生物がすむ環境を維持しようとの思いを込め、この農法を生かした酒造りに力を入れていく考え。

同社は昨年、同市内の契約農家寒河江一紀さん(63)と連携し、ロボットを使い30アールで県産酒造好適米「出羽燦々(さんさん)」を栽培する実証実験に取り組んだ。ロボットは、鶴岡市のまちづくり会社ヤマガタデザインのグループ会社「有機米デザイン」(東京)などが開発したものを使った。太陽光発電による電力と衛星利用測位システム(GPS)で自走し、スクリューで水田の泥を巻き上げて水を濁らせる。太陽光を遮ることで雑草が育ちにくくする。

寒河江さんにとって無農薬、無化学肥料での栽培は初の試み。田に水を張った後の約3週間ロボットを稼働させ、目標とほぼ同じ1230キロを収穫した。品質面もこれまで同様1等米となった。「ロボットを使わなければここまでの収穫を確保するのは難しかった」と寒河江さんは分析する。

ロボットを活用して無農薬栽培した酒米を使った仕込み作業=米沢市・小嶋総本店

小嶋総本店はこの酒米を使った仕込み作業を始め、720ミリリットル入りで1700本程度を造る。同社は実証実験で一定の手応えを得たとし、今年はロボット2台を1台当たり50万円で購入し、生産者と協力して栽培規模を3倍の約90アールに広げる。高畠町の農業法人おきたま興農舎の水田でも活用し、収量も3倍程度の約3600キロを目指す。

ロボットの活用により除草の労力は減るものの、病気や害虫対策などのハードルは残る。土壌が変わるまでにも時間を要する。小島社長は「2、3年続けてみないと評価はしづらく、商品価値を理解してもらうための努力も必要」と先を見据え、「生物多様性や農業の持続可能性を見据え、日本酒を造る立場からいろんな価値軸を提案していきたい」と語った。

2023年5月23日山形新聞より