大雨被害からの復旧が進む大平温泉。ボランティアも訪れ、露天風呂の土砂撤去作業が行われた=10日、米沢市李山

先月27日の大雨で、米沢市の山あいにある秘湯・大平温泉の旅館に土砂が流入するなどの被害があり、お盆ごろまで営業再開が困難な状況であることが11日、分かった。ボランティアも参加して復旧作業を急いでいる。

最上川源流に位置する同市李山の一軒宿・大平温泉滝見屋は、源泉を引くパイプが流され、お盆ごろまでの休館を余儀なくされている。例年大型連休に営業を始めるが、今期は建物が豪雪被害に遭い、先月27日も修繕作業中だった。その日は午前中から本降りとなり、関係者は全員下山。翌日戻ると、四つある露天風呂全てに土砂が流入し、内湯を含め全ての風呂に源泉を引く全長200メートルほどのパイプが流されていた。大雨によるパイプの損傷は、過去20~30年経験がないという。

8月から営業再開の予定で予約を受けていたが、パイプの復旧に時間がかかり、お盆に間に合わせるのは難しい見通し。全国の常連客らに断りの電話を入れざるを得ない状況だ。

ただ、利用客らによる支援の動きも出ている。山あいで重機が入れないため、作業は人海戦術。今月10日は利用客らがボランティアで露天風呂の土砂撤去に取り組んだ。若おかみの安部里美さん(43・H10卒)は「自然の美しさと厳しさは隣り合わせだと改めて実感する。最上川源流の自然、文化を伝える拠点を守りたいし頑張りどころと思うが、個人の宿としてできる範疇(はんちゅう)を超えている」と話す。

一方、一軒宿に続く道に大量の土砂が流入し、一時通行できなくなった同市関の新高湯温泉吾妻屋旅館は、重機で道を仮復旧させ、今月2日に営業を再開した。通行は悪路に強い四輪駆動車に制限、それ以外は宿のワゴン車が送迎する。全長約700メートルの道路は同旅館の私道で、アスファルトによる舗装など全面復旧に向けた見通しは立っていない。同旅館主人の安部直人さん(51)は「気候の極端化が進み、不安は大きい。台風など荒天が事前に予想される場合は、安全のため営業自粛も考えなければならない」と懸念する。

これらの被害を受け、市内の温泉地でつくる温泉米沢八湯会は、クラウドファンディングで復旧資金を確保することも検討している

2022年7月12日山形新聞より