米沢市の白布温泉で唯一かやぶき屋根が残る西屋旅館(遠藤友紀雄社長・S58卒)が、クラウドファンディング(CF)でふき替え作業の費用調達を行っている。かやぶき文化の衰退とともに作業の人手や材料の確保が困難となり、コストも上がっている。同旅館は「厳しい現状を知ってもらい、貴重なたたずまいを次世代に残したい」としている。

日が当たる南側を中心に痛みが目立ってきた西屋のかやぶき屋根。クラウドファンディングでふき替えの支援を募っている=米沢市

かやぶき屋根があるのは1829(文政12)年に建てられた母屋部分。他二つの旅館、中屋と東屋と共に白布温泉のシンボルだったが、2旅館は14年前火災に遭った。被害を免れた西屋のみが往時の姿を残しており、同市の景観重要建造物に指定されている。

以前は地元住民を中心にカヤ集めを含め、ふき替え作業を担った。今は職人だけでなくカヤも遠方から確保しなければならない。輸送費を含めてコストは上昇しているという。西屋でも15年ほど前までは、古くなった部分を順番に補修していたが、地元の職人が引退し毎年の作業が困難となった。2012年に福島県の職人に依頼して全面ふき替えを行ってからは、雪の重みで破損した部分を19年に改修したのが最後という。

女将の遠藤央子さん(45)によると、かやぶき屋根は数年前からコケや草が目立ち、痛みが気になっていた。だがコロナ禍で経営環境が厳しく、費用が捻出できずにいた。「費用は自らの商売でまかなうべきだ」と考えていたが、CFで文化財の修復費用を募っている例を知り挑戦した。

今回は傷んだ部分を中心に補修する。12年に改修を手がけた福島県の職人に依頼する予定で、職人の宿泊代・食費を除いたふき替え費用、返礼品の費用など約400万円に設定した。遠藤さんは「日本の古き良きものが危機にあり、誰かが守らないと失われてしまうことを知ってほしい」と話している。

4日午後5時現在、目標額の75%に達している。到達した場合は、新たな目標額を設定し、母屋の歴史的空間を生かすための改修費などに充てる考え。支援はサイト「CAMPFIRE」で5月末まで募っている。

5月6日午後9時半当初の目標を達成。

2024年5月5日山形新聞より