加藤国雄さん(S39卒)

米沢出身で野村総合研究所取締役、大阪経済大教授を務めた加藤国雄さん(76・S39卒)=横浜市=が、「上杉鷹山の財政改革と金主たち~米沢藩の借金・再生史」を自費出版した。深刻な赤字にあえぐ米沢藩を立て直し、名君と名高い9代藩主鷹山の治世を、金融の視点で研究、再評価した。

きっかけは2014年、テレビの歴史番組が「米沢藩の借金は20万両(現在の200億円に相当)あった」と紹介していたこと。キャロライン・ケネディ元駐日大使が「父は鷹山を称賛していた」と発言し、改めて功績に注目が集まっていた頃だった。データに基づき専門の金融面から調べてみようと思い立った。

本書では、金主(大名に金を貸す人)、重臣の竹俣当綱(たけのまたまさつな)、莅戸義政(のぞきよしまさ)らの動きに焦点を当てながら、赤字財政の資金繰りに金主がどのように応じたか、どのような施策で財政を立て直したかといった点を分析。金主への低利化の要請や支出の圧縮、養蚕、絹織物に代表される殖産興業により、借金漬けだった藩が、農民に低利で金を貸し出す「勧農金」という仕組みをつくるまでに再生した過程をまとめた。

鷹山が根本的な改革に臨むに当たり「事前に有力金主からの借金で財政面の手立てを講じたのでは」との見方も披露している。歴史書や論文など40~50ほどの文献に当たり、米沢古文書研究会などの協力も得た。

加藤さんは「民が豊かになることを考えながら財政再建に取り組む米沢藩の姿勢は、今も学ぶことができるのではないか。さらにこの分野を研究する人が出てきてほしい」と話す。22日には、米沢市の伝国の杜で開かれる秋月三名君フォーラムで講演する予定だ。

書籍は2310円。アマゾンやhontoなどのネット書店の他、伝国の杜で購入できる。

2022年10月15日山形新聞より

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金融面から上杉鷹山の改革に迫った著書