米沢有為会我妻栄記念館館長・矢尾板操さん(S43卒)
「イミ消費」先取り ■没後50年、記念事業を計画

ある総合住宅メーカーの会員向け雑誌に、最近の若い世代を指す「Z世代」について説明する記事が載っていました。アメリカから伝わった世代分類の言葉です。2022年時点で10歳前後から20代前半のことを指し、デジタル・ネット中心の生活スタイルに特徴があります。

Z世代の消費行動は「イミ消費」と呼ばれ、単なる流行やブランド品に対しては興味がなく、サービスや商品に付帯する社会的・文化的価値への共感を重視します。「持続可能な社会の実現」「環境への高い意識」「健康で快適な自分らしい生活」などを大切にするといいます。

先の記事によると、過去の消費行動は次のような変遷を経てきたとの説明がありました。1970~80年代は「モノ消費」。高級車や家電など、モノを手に入れることに価値がありました。2000年代は「コト消費」。旅行や習い事、スポーツ観戦など自分が体験することに価値を見いだしていました。2010年代以降が「イミ消費」の時代。無農薬野菜や省エネ家電など、社会貢献や地域貢献、環境保護など意味ある活動に重点をおいて消費することに価値があるとの考えが広まりました。

米沢市出身の民法学者我妻栄先生は、まさに「イミ消費時代」を先取りした方です。先生は戦後の日本発展の礎を法律面から整備されました。われわれの日常生活に最も密接に結びついた民法の戦後大改正に関わり、戦後の新たな価値観を構成する大きな原動力になったと私は思っています。

例えば、今では当たり前になっている男女平等を含む「万民平等」の考え方を定着させました。11年の福島第1原発事故の対応で基となった「原子力損害賠償法」を60年前に作られたのも先生です。必ずしも理想通りとはなりませんでしたが、一人も泣き寝入りさせないという方針で、万一の事故に備えた立法をされました。

先生は1973(昭和48)年10月21日に76歳で亡くなりました。今年が50年目の命日にあたり、「米沢名誉市民我妻榮没後50年・我妻栄記念館開業30周年記念事業委員会」が立ち上がっています。公益社団法人米沢有為会と米沢市が主催者となって記念事業を計画し、10月21日にで伝国の杜置賜文化ホールにおいて記念式典を行います。先生の胸像を新たに建立するための募金活動も行われています。詳しくは先生の母校である米沢興譲館高校同窓会のホームページをご覧いただければと思います。

10月には命日に合わせた特別展を我妻栄記念館と文化複合施設ナセBAで開催し、新たに発見された先生直筆の巻紙の手紙(約2メートル)を初めて展示します。17歳の我妻少年が米沢を離れて一人東京に向かう時、親友に宛てた手紙です。いかに重大な決意を胸に秘めて米沢を離れたかが伺える貴重な資料です。先生の偉業を改めて県内外の方々に知っていただきたいと思います。

2023年2月22日山形新聞より