米沢織をはじめとした、普段は見られないものづくりの生産現場を見学し、体験できる地域一体型のオープンファクトリーが15、16日の両日、米沢市で初めて開かれる。関係者は「ものづくりの街」を改めてアピールすることで、観光誘客や事業者の働き手の確保、ビジネスチャンスの創出につなげたい考えだ。
「ものづくりの街」発信・観光誘客や商機創出期待
「360°(さんろくまる)よねざわオープンファクトリー」と銘打ち、和服、洋服生地の織り、染色、縫製、加工などを手がける米沢織関連の11事業者をはじめ、日本酒やみその製造業者、飲食店など計約20社が参加する。参加事業者でつくる実行委員会が主催し、観光まちづくり会社プラットヨネザワが企画を担う。
見学できる現場は、米沢織関連だけでも、昭和初期製造の織機を使った織り、着物の仕立て、縫製、洋服生地の製造、仕上げなど多岐にわたる。職人から手ほどきを受けながらティーマットを造ったり、ハンカチを染色したりといった体験プログラムや限定品の販売、オーダーシャツ受注会なども準備している。
オープンファクトリーは以降も開催する考えで、初回は市民や近隣地域をメインターゲットに、来訪者数は千人を目標とする。まずは米沢のものづくりの原点ともいえる繊維産業をメインとしつつ、将来的には米沢八幡原中核工業団地などの工業系製造業にも広げる構想を描く。
製品製造過程の一部を担うなど企業間の取引が多い製造業にとって、自社の技術を一般消費者に見てもらう機会は少ない。オープンファクトリーは消費者に直接自社の技術を伝えられる機会となり、若い世代が企業の魅力を知ることで、人手確保につながるケースもあるという。金属加工で知られる新潟県燕三条地域の例では70~80社が参加、国内外から3万人超を集め、地元産業を広く発信する機会になっている。大学生と連携してオリジナル商品を作る地域や、開催をきっかけに企業が進出する地域もあるなど、産業の活性化に寄与しているようだ。
実行委員長の近藤哲夫近賢織物社長(S55卒)は「米沢のものづくりを見てもらう良い機会。将来的には世界にも発信でき、ビジネスチャンスを生み出せる場にしていきたい」と話す。米沢のものづくりは長い歴史に裏打ちされ、企業は個々に高い技術を持つ。一方で、それが広く知られているとは言いがたい。地域が一体となって取り組むことで、先行地域に負けずにものづくりの力と魅力を伝える好機としたい。
2023年9月7日山形新聞より